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2004年3月 9日 (火)

『読書の階段』 荒川洋治

0169683000001.jpg 今、私は「荒川ブーム」である。
何を読んでも嬉しい。何を読んでも楽しいのだけれど
なかでも、本について書かれたものが最高。
本書は、既発表の書評81編をまとめたもの。

荒川洋治は、平易な言葉を並べた単純な構文の文章を書く。
本人は「作文」だと言う。そこにはリズムがある。
文章の間に空気がある。言葉を重ねずに
たくさんのことを言い表すことができる。
不思議なところに読点「、」を打って、息をつぐ。
普通は漢字を使うところを、平仮名で書く。

自分を、ちょっと情けないところに置いて、権威とは絶対に手をつながない。
でも、嫌いなものは嫌いとはっきり言う。その真っ直ぐさは、少年のものだ。
読んで、はっとする。
感動のあらわし方も、ストレートだ。読んで、心がきゅんとなる。

例えば『ハネムーン』(吉本ばなな著・中央公論社)の書評の最後の部分。

   結婚ってこんなに簡単にできるの、消えた人たちとの関係は? など
   この作品には不思議な点が数々残る。なのにこちらはみたされてしまう
   のである。それは、いまうれしく思い、よろこびに感じることだけではなく、
   まだまだ、遠くにあるものまでが見えてくる。そんな文章の光景に出あうからだ。

読んだ時の喜びが伝わってくる。

また、例えば『官能記』(芦原すなお著・角川書店)の書評のこれまた最後の部分。

   お互いにはだかになることが心を、いのちをはずませるようすを、
   作者は心をこめて描いていく。この小説の世界そのものにぼくは、感じた。

これは、既に「詩」でありましょう。
私の「荒川ブーム」はまだまだ続く。

読書の階段  荒川洋治  毎日新聞社  1999年

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» 荒川洋治 [Sometimes, I catch a flash of spark of life.]
僕は、出会ってしまった。荒川洋治という詩人に。 それは、突然、ではなかったが、しかし、突然だった。 -------------------- 最近、漠然と... [続きを読む]

受信: 2004年9月 3日 (金) 04:58

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