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2004年4月15日 (木)

「カケラとうつわ」 三谷龍二+PERSONA STUDIO

「カケラとうつわ」 三谷龍二+PERSONA STUDIO

中央線の西荻窪駅北口のバス通りを真っ直ぐ北上します。善福寺川を越えると緩やかな上り坂になり、左手に東京ガスの敷地があります。その敷地を過ぎると、左手に目指すギャラリーはありました。徒歩10分程度の道のりでした。

「ギャラリー ブリキ星」。木枠に縦桟と透明ガラスの入った引き戸をあけると、かすかに木のにおいを感じました。中に入ってたたずんだまま、どなたかが出てくるのを待ちました。声どころか、物音一つしないので、記名帳に記帳してから、まずは、その空間を見回しました。入ったところは、白い漆喰壁に5坪もないほどの三和土です。そこにいきなり、三谷さんの木の器が整然と並べられています。三和土にも、いかにも手作りと思われる木の細長い机にも。

正面奥は、2つの空間に分かれています。左半分は2段ほど高くなっている木の床の部屋、その右手に小上がりがあるようです。この小上がりから、奥の母屋か何かにつながっており、ギャラリーの方はそちらのほうにいるのだなと目星をつけ、まずは器を見ました。大きい丸いお皿、中ぐらいのお皿、長方形の長いお皿、ぐいのみなど、大体が明るさの異なる茶系と黒ですが、材料の木も、木目の出方も、皆、それぞれ違うお皿たちが並んでいると、壁の白に生えて、呼吸をしているように見えました。

正面奥の作品を見ようと、段を上る前に靴を脱ごうとしたところ、「靴のままで」と声がしました。うすぐらい小上がりの畳の上で、ご主人が静かに座って文庫本を読んでいらしたのです。私がお皿に顔を近づけたり、ちょっと表面を触って固さを味わったりしているのを知りつつ、私1人で楽しむのを邪魔しないよう、声をかけずにいてくださったようです。

意表をつかれた私はご主人に挨拶をして初めて、ギャラリーがその見えている空間ですべてなのだということがわかりました。2段上がった木の床の空間は、白い漆喰壁に囲まれた4畳半ほどの空間なのですが、素敵なのは、その部分だけ天井が吹き抜けになっており、自然光が降り注いでいることでした。

壁にかけられている立体的なオブジェは、無骨な素材を張り集めたオブジェでしたが、やわらかい自然光の中で、とても美しく、やさしくて。その空間の心地よさときたら……。ほんの少し、光のふり注ぐプールの中にいる気持ちに似ていました。

せっかくの貸し切り状態なので、物静かなたたずまいのご主人にお話を伺いました。三谷さんのことはつい数日前に、あの本の装幀の方だったことが、私の頭の中で一致したばかりだと告白した私にも、態度を変えることなくお話ししてくださいました。

三谷さんは2年に1回、このギャラリーで展示会を開いている。展示のテーマにある「カケラ」とは、もともとの役目を既に終えた道具の一部のことで、本来の役目を終えたそうしたものの温かみや美しさを作品にしたいという思いが込められている。「カケラ」の美しさに注目するきっかけとなった、三谷さんのお友達の工房の火事の焼け跡から拾ってきた「カケラ」による作品は、今回の展示にはたまたま入っていない。2年後も、おそらくこのテーマによる展示となるのではないか。本の装幀に使われた木製の人形は、今回の「カケラ」のテーマには合わないので、展示には使わなかった。

そのようなことを静かに、ゆっくりと、言葉を選びながら話してくださいました。

ギャラリーの空間と作品の完璧なまでの調和に感じ入った旨を伝えると、ご主人が「ほんとうに空間にぴったりの作品ができました」と、非常に満足そうな表情をしてお答えになったのが印象的でした。壁の漆喰の白と、天上から降り注ぐ自然光と、「カケラ」の素材感を残したまま、全体を一様でなく白にまとめて塗ることで統一感を出している三谷さんのオブジェが、まさにそこの空間に置かれるために存在していると思えるほどの、完璧な一体感をかもし出していたのです。

空間と一体になった展示の心地よさと、静かにギャラリーでの時間をつむぎ出しているご主人のやわらかさと、確かな自信。このギャラリーで過ごした30分にも満たないわずかな時間の豊かさは、私の心にまた一つ、小さな喜びの種をくれました。足を運んで、自分の目で確かめてみなければ得られないもの。すばらしい午後でした。

今回の展示の紹介(写真もあります)
   http://members.jcom.home.ne.jp/burikiboshi/kikaku/k.html
三谷龍二さんのホームページ
   http://www.mitaniryuji.com/
ギャラリー ブリキ星のホームページ
   http://members.jcom.home.ne.jp/burikiboshi/
三谷龍二さんも出品される松本市美術館での展覧会の予告
   http://www.city.matsumoto.nagano.jp/artmuse/p3/p3-index.html
   http://www4.ocn.ne.jp/~cfm/


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