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2004年5月

2004年5月27日 (木)

『東京遊歩 東京乱歩』 ―文士の居た町を歩く― 磯田和一

0243235900001.jpg この本を読んだら,今すぐ出かけたくなること請け合い。ああ,文士の居た町をそぞろ歩きたい。さまざまな思いに胸を躍らせながら歩きたい,ほんとうに今すぐにでも!

江戸川乱歩篇では,明智小五郎の原風景がある。芥川龍之介篇では,田端文士村を。樋口一葉篇では,一葉の居た本郷・竜泉・西片・三ノ輪を歩くなどなど。これがね,スケッチで紹介されているわけなんですね。羨ましい。私が最も憧れるのは,出かけた先のスケッチをさらさらっと書き,横にちょっとした印象を短い文で書きなんていうことができる人なんだなあ。ふらりと入った食堂の食器が面白ければ,食卓ごとスケッチし・・・なんていうのが。絵が描けるって,ほんとーーに素晴らしい。

そう,この本にはいろんな意味で幸せがいっぱい詰まっている。しかし,今は,本が1文字も読めないぐらい予定がぎっしりで,地団駄,地団駄。無論「遊歩,乱歩」の暇などゼロ。いとかなし。

『東京遊歩 東京乱歩』 ―文士の居た町を歩く― 文と絵 磯田和一 河出書房新社
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2004年5月24日 (月)

『武蔵丸』 車谷長吉

0243536600001.jpg 車谷長吉の著作に向かうときは、一呼吸置いて、日常を脱する気持ちになることが必要だ。時代も、感覚も、言葉も、価値観も全く異なる、車谷ワールドに飛び込むつもりで、「いざっ!」と、目をつぶって飛び込む。明るい日向から、光の当たらない暗い部屋に入ってきたようで、目がくらむ。

とはいっても、車谷歴『文士の魂』『業柱抱き』『鹽壺の匙』『赤目四十八瀧心中未遂』に次ぐ5作目ともなれば、すっと世界に入れるようになってきた。この人の作品は、年に何回か読みたくなる。少しずれたタガを、しめ直してもらうような気持ちになる。もう一作、忘れていた。『金輪際』。

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2004年5月23日 (日)

『潤一』 井上荒野

0238439400001.jpg 連作短編集である。14歳から62歳までの9人の女性が、潤一との出会いを語る。そして、最後の一編は、26歳の潤一の一人称の語り。潤一を描いているようで、描かれているのは女性の内面であるという構図は、荒野の特色だろう。

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2004年5月22日 (土)

『ドナウよ、静かに流れよ』 大崎善生

0233784000001.jpg 留学中にドナウ川に恋人と身投げした19歳の少女の、心の足跡をたどるノンフィクションである。出だしの部分が少しもたついていて、選書に失敗したかと一瞬ちらりと思ったが、取材が始まってからの記述と展開はすばらしく、余りにも若すぎる死を選んだ少女の純粋な心を追いかける、質の高い一冊に仕上がった。

他の作品として
 『聖(さとし)の青春』   2000年 新潮学芸賞受賞
 『将棋の子』       2001年 講談社ノンフィクション賞受賞
 『パイロットフィッシュ』  2001年 吉川英治文学新人賞受賞

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『おじさんのかさ』 佐野洋子

0237045100001.jpg 梅雨の季節にぴったりの本。はい、またまた佐野洋子でーす。

この絵本は、もう絵を見ているだけでも十分楽しい! 佐野洋子の絵の特徴は、「目」なんですけれど、このおじさんの「目」は格別すばらしい!! 目つき、顔の角度……。見ているだけで、性格や、考えが伝わってくるほどです。

「おじさん、あっちに いくんなら、いっしょに いれてってよ。」といいました。「おっほん。」と、おじさんは いって、すこしうえのほうをみて、きこえなかったことにしました。

子ども相手にこの態度! もう最高!!

そして、本書のハイライトシーンは18~19ページ!! 絵本ならではの醍醐味を味わえます。でも、ちゃんと最初から順番に読んでいかなければダメですよ~~。

さあ、雨が続いても、この絵本を思い出して楽しく過ごしましょう!

『おじさんのかさ』 佐野洋子 作・絵 講談社 1992年発行
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2004年5月21日 (金)

『私はそうは思わない』 佐野洋子

0132584700001.jpg 佐野洋子ブーム、猛然と驀進中。共感してばかりで、人のふんどしで相撲をとっているようなもので、自分で物を考えないのはまずいなあと思うのだが……。佐野洋子に考えてもらって、「ほんとだ、ほんとだ、アハハ」って言ってるだけでは、人間、進歩は望めない。でも、今、ちょっと心がお休みしたいんだろうと思うことにして、このリハビリ読書を自分に許しているのである。(まだ読む本あるもんね)

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2004年5月19日 (水)

『ららら科學の子』三島由紀夫賞受賞

0236535300001.jpg 三島由紀夫賞受賞でーーす。
(^^)//""""""パチパチ おめでとうございます。

受賞を発表している新潮社のサイトはこちら

『ららら科學の子』
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不肖とみきちも以前に感想を書いております。(こちら

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2004年5月18日 (火)

『約束よ』 辻原登

0224827900001.jpg 『遊動亭円木』の続編は、「窓ガラスの文字」と「かな女への牡丹」の2篇。そして「かみにさわった男」には、円木は脇役として登場する。ヒッチコックが、自作の映画にちょろりと出演するかのように。

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『あれも嫌い これも好き』 佐野洋子

0229944000001.jpg またまた佐野洋子のエッセイです。読むと元気が出るんですよ。単行本は2000年刊行、文庫本は2003年。『神も仏も……』の少し前の時期なので、あそこまでの達観、パワーまでは至らず、その前段階の感じ。

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2004年5月16日 (日)

『熱い書評……』の刊行記念イベント

0241491600001.jpg 本書の刊行記念イベントが7月15日(木)18:30より、中条省平さんを迎えて、ジュンク堂書店池袋店喫茶スペースにて行われるそうです。詳しくはbk1サイトをご参照ください。(こちら

先のことだから予定は不明ながら、もしかして、1/66の方々とお目にかかる機会かもしれないということですね。つまりは、「熱い書評プロジェクトwithbk1」のオフ会かしら? 本の虫たち大集合になるなら、行かないとね~。

すみません、間違えました。正確には「bk1 with 熱い書評プロジェクト」でした。ごめんなさーい。

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『友だちは無駄である』 佐野洋子

これは傑作である。反抗期のすべての少年少女にこの本をプレゼントしたい。自分が反抗期の時にこの本があったら、どんなに救われていただろうと思う。

本書は、佐野洋子の「友だち論」を明らかにするために、佐野洋子自身の文章と、佐野洋子と谷川俊太郎、佐野洋子と小形桜子の一問一答という形で成っている。どちらがどちらに質問するというのではないけれども、佐野洋子がどんな友だちと、どんなふうにつき合ってきたか、佐野洋子にとっての友だちとは何かが、それはそれは正直な言葉で語られていて、その時々の佐野洋子の心の様子が驚くほど鮮明に映し出される。

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『路地の匂い 町の音』 森まゆみ

0158664100001.jpg『谷中・根津・千駄木』――愛称「谷根千(やねせん)」――という地域雑誌をつくり、お年寄りの話の聞き取りをしてきた、地域に根づいたNPO的活動の先駆けの存在である著者が、十数年の間、町について綴った原稿の集大成。

私自身が下町の良さを感じるようになってきたのは、最近のことである。物珍しげに古きをたずねる、あるいは観光地を訪れるというのではなく、日常の続きの場所として、昔から流れてきた時間が途切れない場所として、地続きの心を感じたくて、足を運ぶことが増えてきた。

森まゆみの視点は、生活者から離れない。理想論を語るのでなく、現実から始まっている。教わることはたくさんある。

『路地の匂い 町の音』 森まゆみ 旬報社 1998年発行
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2004年5月14日 (金)

『100万回生きたねこ』 佐野洋子

0102136300001.jpg 久し振りにまた読んでみた。何度読んだか知れないのに、また「あっ」と心をつかまれる。こびない絵と文。すべての甘ったるい感傷を排除する意志の潔さ。

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『神も仏もありませぬ』 佐野洋子

0238201700001.jpg 佐野洋子は口が悪い。佐野洋子の前で、気取ったことを言ったり、よくわからないのに賢しらな口をきいたりしたら、途端にどやされそうである。

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2004年5月12日 (水)

『服部さんの幸福な日』 伊井直行

0000393700001.jpg 面白かった~。服部さん、いい味出してます。ユーモアたっぷり、現実味あふれるペーソスあり、そして伊井直行の得意技、日常にはあり得ないような、ちょっとばかりSFっぽい雰囲気もある長編の読み物。

bk1のサイトで、柴田元幸氏による、本書と同じ著者の『濁った激流にかかる橋』の書評が読めます。(こちら

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2004年5月11日 (火)

『ジョゼと虎と魚たち』 田辺聖子

短編の名手、田辺聖子ここにあり! ああ、こんなにいろいろ女の裏側を書いてしまってはダメですよー。男にはわからないようにしておかなくては……。(恋愛下手な女性は必読。恋愛上手な女性は、自らを振り返るためにお読みください。)

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2004年5月10日 (月)

『遊動亭円木』 辻原登

0241753500001.jpg この作者の作品はまず、オリジナリティがとても高い。文体も、描かれる世界も、独自性をきっちりと持っている。今まで知らずに損をしていた。いや、こうやって出会って、得をしたのか。どっちでもいいけど、とても面白かった。ジャンルは、何と言えばいいのか、江戸っ子人情幻想小説かな。

90年、『村の名前』で103回芥川賞受賞だそうだ。

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2004年5月 9日 (日)

『クライマーズ・ハイ』 横山秀夫

0234891300001.jpg今ごろ読んでという感じだけれど、やっぱり息をつかせぬ面白さ。『半落ち』のような謎解きのスタイルよりも、社会や家族、友人との間の男の葛藤を描く本書のスタイルのほうが、この著者は力を発揮するなあと感じた。

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2004年5月 8日 (土)

『吾妹子哀し(わぎもこかなし)』 青山光二

0233760700001.jpg帯より。「自分の愛に責任を持たなければ―― 少しずつ壊れてゆく痴呆症の妻――夫の老作家を支える、かけがえのない恋慕の記憶。」

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2004年5月 7日 (金)

『美よ永遠(とわ)に』 Keats, my genius  青山光二

0157328800001.jpg 任侠の世界を主に描いてきた著者が、アルツハイマーになった妻の介護をテーマに夫婦愛をうたいあげた『吾妹子哀し』で、川端康成文学賞を90歳で受賞したのは記憶に新しい。それを読む前に、この作家が任侠以外にどんな作品を書いているのか、まずは本書と『麗人』を読んでみることにした。

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『ヌルイコイ』 井上荒野

0223584800001.jpg 井上荒野を読むのも、もう4作目。父を描いた『ひどい感じ』以外は皆、心の居場所が見つからない女性の恋愛がテーマの小説と言っていいかと思う。

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2004年5月 6日 (木)

『生活』 島尾伸三

「照片雑文★★」という副題のついた、写真と文章による生活の記録である。観念的な世界を出ない、ひとりごとに近いものなのに、全く飽きずに、ぐんぐんと読めてしまう。屈託のある、いろいろな事柄に絡まりやすい性質が、出口を見つけられない焦燥が、文章の中に感じられるのに、読んでいるこちらは少しもイライラしない。何故なのだろうと思いながら、最後までその答えは見つからなかった。

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『もう切るわ』 井上荒野

0207993800001.jpg 病気になった男の妻と愛人の一人称の話が、交互になっている長編小説。どろどろしない。妻も愛人も、男を愛する気持ちに盲目的ではなく、どこか自分を疑ったり、自分の気持ちを秤にかけていたり、男の死後のことを考えていたり、日々の鬱屈を見つめたりする。そのつかみどころのなさが、荒野の小説の特徴だろうか。光晴の生と死によって小説家としてのインスピレーションを与えられた小説家・荒野が、どこまでそれを咀嚼し、自らの血肉にし、小説という果実に実らせるか。それは生涯を通して荒野が背負うことになる課題だろう。

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2004年5月 5日 (水)

『ひどい感じ 父・井上光晴』 井上荒野

0220912300001.jpg 井上荒野がとても好きになった。ファーザーコンプレックスの強い娘であることからは、逃れられそうにないけれど、人間の本質を見抜き、少ない言葉で的確に表現する力はすばらしい。そして、それが翻って自身を語ることになっている。

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2004年5月 3日 (月)

『声の残り』 ドナルド・キーン

『声の残り――私の文壇交遊録』 ドナルド・キーン著/金関寿夫訳  朝日新聞社

1992年4月から7月まで、朝日新聞に連載されて、同年に単行本化されている。文庫化は1997年。朝日新聞連載当時、時々読んだ覚えがあるものの、古典好きな過去の人という認識で、あまり注目しなかった覚えがある。先般読んだ『同時代を生きて』の中で、キーン氏が日本の古典のみならず、戦後の日本文学とも非常に深い関係を持っていたことを再認識。また、本書自体に鶴見氏が言及していたこともあり、ふと手にとってみた。

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2004年5月 1日 (土)

『あ・じゃ・ぱ!』 矢作俊彦

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大作です。1997年、新潮社から上下巻で出ていたものが、2002年に角川書店から、本文773ページの分厚い一冊として出版されている。いや~~、すごいです、この本。第二次大戦後の日本の歴史を、実在の人物を使って、勝手に書き換えた、批評精神・ユーモアたっぷりのハードボイルド。どれだけ楽しんで(あるいは腹を立てて)読めるかは、読者の知識の多寡によって違ってくるのだろうけれど、知識がなくても、十分楽しめるお話です。

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