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2004年12月17日 (金)

『特捜検察』 魚住 昭

特捜検察(岩波新書 新赤版 524)
魚住昭著

出版社 岩波書店
発売日 1997.09
価格  ¥ 777(¥ 740)
ISBN  4004305241

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 1997年発行のノンフィクション。戦後、誕生した特捜検察が活躍した事件を描きながら、特捜検察内の人間模様や、時代の中での判断、組織としての限界などを描いている。ロッキード、昭和電工、リクルート、佐川急便などを、検察側から描き、事件の全貌と時代の空気を的確に描いている。

この後、『特捜検察の闇』では、検察の腐敗を描いているようだ。続けて読む予定。

一部抜粋

この10年間、私が見つづけてきた特捜検事たちは、ある種の矛盾をかかえた存在だった。彼らは検察庁法や刑事訴訟法で、一人ひとりの独自の判断で容疑者を調べ、逮捕状を請求・執行し、起訴する権限を与えられている。独任官庁である。たとえば、上司の意向に逆らって政治家を逮捕・起訴したとしても、その処分は法律上有効とみなされる。にもかかわらず、彼らは「検察一体の原則」という目に見えないたができつく縛られている。検事総長を頂点にした厳格なピラミッド型組織の一員として、上層部の指示は絶対的な重みを持つ。辞職する覚悟でもなければ独断専行は許されない。言い換えれば、彼らは国家中枢の腐敗を摘発する独立の捜査官であると同時に、国家を守る中央官僚群の一員だという二面性を持っている。

このシステムは政治腐敗の摘発という点ではかなり有効に機能してきた。特捜検事たちの活躍を抜きに、93年の自民党一党支配の崩壊やその後の政治改革の動きは考えられない。しかし、操作の焦点が官僚機構に絞られていくにつれ、特捜検事たちは自分たちが抱える矛盾に直面しなければならないだろう。大蔵省を中心にした日本の官僚制度に本格的なメスを入れることは、自らの足元を切り崩していくことにつながるからだ。

著者の特捜検察を見詰める視点は、上記に凝縮されていると言っていいだろう。読み物としては、特捜検察の成り立ちと、存在意義、機構を説明しつつ、大きな事件をわかりやすく説明し、検察内部をドラマ仕立てに、かつ、クールに描く。222ページの岩波新書、読みやすいが、中身はぎっしり詰まっている。お勧め。

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