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2005年1月 4日 (火)

『ナショナリズムの克服』 姜尚中 森巣博

ナショナリズムの克服(集英社新書 0167)
姜尚中著・森巣博著

出版社 集英社
発売日 2002.11
価格  ¥ 735(¥ 700)
ISBN  4087201678

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 ブログにアップするに当たり、bk1のサイトを覗いてみたところ、激しく賛否両論に分かれていた。それはそうだろうと思う。日本について、ナショナリズムについての本であれば、「面白かった」「感動した」というたぐいの感想がアップされているはずがなく、思想の違いによって意見が明確に分かれるのは当然。

まずはカバー裏の紹介文を。

在日の立場から、長年、「日本」について鋭い批判と分析をつづけてきた姜尚中と、オーストラリア在住の国際的博奕打ちで作家の森巣博という、異色の対談が実現しました。テーマは、一九九〇年代以降、日本に吹き荒れている、ナショナリズムの嵐です。第一部で、日本型ナショナリズムの歴史を通観。第二部で、グローバル化によって変質する国民国家像と、国境なき後の世界の未来について、刺激的な意見交換を繰り広げます。国家とは何か、民族とは何か、故郷とは何か。本書は、ナショナリズムを理解し、何者をも抑圧しない生き方を模索するための入門書です。

まさに入門書として、非常によくできた本であった。門外漢の私にも、どんな人がどんな立場でどんな考え方を述べてきたのか、その時代的背景はどうなっているか、などがざっと頭に入る。対談の冒頭で森巣が冗談をかます。「私は、新書というのは知識を100持っている人が10書くからおもしろいのであって、私みたいに知識が10の人間が100に見せかけて書いてもおもしろくない(…中略…)それなら、知識も見識もある姜さんのような方に、「チューサン階級」の視点から質問しまくる一冊なら可能ではないか、という話になりまして」。

このチューサン階級とは、中学校三年生制度の知識レベルのことだそうだ。

さて、思想の中身に踏み込むことは、私にはできないので(私こそチューサン階級だ)無謀な試みは控えたいと思うが、本書の「新書」としての価値について一言。非常に意欲的な新書である。意欲は、巻末に人物・用語解説が付されているところに十分感じられる。最近、仕事で、第二次世界大戦前後の歴史関係の書籍を調べる機会が多いのだが、巻末に索引があるだけで、その書籍の資料的価値が何倍にも上るのを痛感する。エンターテインメントや文芸書以外の書籍には、是非とも巻末の索引をつけてほしいと思う。新書というのは、読み物ではなく、ある種、専門家と一般読者を結ぶ窓口だと思う。だからこそそういった配慮は必要だ。その意味で、本書は新書合格本!

同一文化、均質文化を主張することで、日本論、日本人論は持ちこたえてきた。しかし、グローバル化と国家意識の両立は今後破綻するのではないかという指摘は、そのとおりだと思う。現実問題が思想を乗り越えている現状があるように思う。そこで森巣が提案するのは、「無族協和」の視点から、近代の歴史、現代のグローバリズムを検証していくというもの。

この対談には、ものすごく多くの要素が詰め込まれている。対談者各人の思想的生い立ちをたどることもできる。森巣の『無境界家族』は集英社文庫に入ったそうだ。

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コメント

>是非とも巻末の索引をつけてほしいと思う。新書というのは、読み物ではなく、ある種、専門家と一般読者を結ぶ窓口だと思う。だからこそそういった配慮は必要だ。その意味で、本書は新書合格本!

大賛成です。新書は競争が激しく、リアル書店では棚確保が大変らしいが、その競争のツールとして巻末索引が評価されるなら、窓口度が高くなるでしょうね。そんな傾向が加速されればいいですね。

投稿: 葉っぱ64 | 2005年1月 6日 (木) 17:12

>葉っぱ64さん

こんにちは。索引をつくることは、著者あるいは編集者が自書を見直す作業にもなるのではと思うと、索引をつける意味がさらに増しますよね~。

余裕があれば、そこに「新解さん」的な独自のコメントをつけることで、その部分が膨脹して、また別の展開が出てくるかもしれないと思ったりします。

投稿: とみきち | 2005年1月 6日 (木) 19:04

索引をCDロムでデータ保存したオマケをつけると、使い勝手がいいですね。
成程、独自のコメントをつけるのもいい。そうなると、注釈付きになってしまうわけですね。

投稿: 葉っぱ64 | 2005年1月 7日 (金) 00:47

うわーCDロムですか。すごく斬新ですね。葉っぱ64さん、思考が柔軟! 一般書なら可能ですよね。新書1冊ずつにつけるのが厳しいとしたら、新書の目録としてまとめてつくっておいて、書店やウェブに用意しておいたら良さそう。

こういうことを考えるの楽しいですね。

投稿: とみきち | 2005年1月 7日 (金) 01:40

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