« 2005年1月 | トップページ | 2005年3月 »

2005年2月

2005年2月26日 (土)

『君恋し』 第15回下北沢演劇祭参加作品

芝居を見てきました。下北沢の『劇』小劇場で。

タイトル 『君恋し』 ――ハナの咲かなかった男――

   作/中島淳彦
   演出/ 石井愃一(東京ヴォードビルショー)
   出演 湯浅実 河西健司 大西多摩恵 中島淳彦 ほか
   
   by クラクラ・プロデュース

続きを読む "『君恋し』 第15回下北沢演劇祭参加作品"

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005年2月14日 (月)

フォーレの『レクイエム』 ミシェル・コルボ/ローザンヌ声楽・器楽アンサンブル

コルボの『レクイエム』。ついに生演奏を聴きました。東京オペラシティコンサートホール。

本日のプログラムは
    ヴィヴァルディの「グローリア」
    ヘンデルの「ディクシット・ドミヌス(詩編110)
    フォーレの「レクイエム」

全体を通して、精神性の高い、美しい演奏であった。聴く者の雑念を一瞬で取り除く音の力。小編成のアンサンブルの生み出す、確かで、迷いのない、コルボがつくり上げてきた音は、予想をはるかに超えて特別な音だった。合唱も、器楽も、ディミニエンド、弱音の美しさが絶品。そしてまた、雄々しく、歌い上げるまっすぐに力強い音が心を打つ。ソリストの声も、ビブラートのない、抑制の効いた骨のある歌い方が、宗教音楽にぴったりである。

1972年のベルン交響楽団との録音では、『レクイエム』をボーイソプラノに歌わせたコルボが(ローザンヌとの1992年の再録音では女声)、今回選んだソプラノ歌手は、ボーイソプラノの性質に近い声を持つ女性歌手だった。

コルボの演奏の特徴はいろいろあるが、今日最も強く感じたことは、曲の中の区切りを非常に大切にすることによって、全体の構成がきちんと出来上がっていること。そのために、安心して演奏に身をゆだねて聴いていることができるのだ。それぞれの区切りの最後の音が、ふっと消える瞬間の見事さは魔法のよう。その切れ目でこちらも一瞬息をつくのだが、緊張がほぐれるどころか、次の区切りの一音を待って、さらに緊張が高まり、曲の終わりに向けて気持ちが高揚してゆく。特に「レクイエム」のSanctusの一音目が素晴らしかった。

アンサンブルは常に安定して全体を支え、曲全体をしっかりと構築していたが、特に素晴らしかったのは、オルガン。控えめながら演奏をやさしく、そして大きく包み込んでいた。

最終章の「イン・パラディスム」は、まさに天国の音。美しく、気高く、天に向かってゆく音を聴いているようで、思わず目頭が熱くなる絶妙のハーモニー。人の声と楽器がここまで一つになった演奏を、私は知らない。

2003年に首の腫瘍の手術をしたコルボは、本日が71歳の誕生日。演奏後、何度となく繰り返されるカーテンコールの中、花束がコルボに渡されると、楽団が「ハッピーバースデー」と演奏。あたたかい雰囲気に包まれた、音楽を心から愛する人たちの集まる夕べであった。


1972年のボーイソプラノを起用したベルン交響楽団との演奏は、エラート(国内盤)からCDが発売されており、1992年のローザンヌとの演奏のCDは、モーツァルトの『レクイエム』とカップリングされ、ヴァージン・クラシックス(輸入盤)から発売されています。是非お聴きください!

| | コメント (6) | トラックバック (3)

『海の仙人』 絲山秋子

海の仙人
糸山秋子著

出版社 新潮社
発売日 2004.08
価格  ¥ 1,365(¥ 1,300)
ISBN  4104669016

bk1で詳しく見る オンライン書店bk1

絲山秋子の作品を読むのは、『イッツ・オンリー・トーク』に続き2作目。作家としては新鋭だから、著作がたくさんあるわけではないが、常日頃、作家自身のホームページに綴られている「何様日記」がぶっきらぼうで、微妙なアンバランス感覚が面白くて、いつも読んでいるせいか、私の中では、新人という意識は全くないのである。

続きを読む "『海の仙人』 絲山秋子"

| | コメント (1) | トラックバック (1)

2005年2月13日 (日)

『村田エフェンディ滞土録』 梨木香歩

村田エフェンディ滞土録
梨木香歩著

出版社 角川書店
発売日 2004.04
価格  ¥ 1,470(¥ 1,400)
ISBN  4048735136

bk1で詳しく見る オンライン書店bk1

まずタイトルについて少々説明をすると、「村田」は主人公の名前である。同作者の『家守綺譚』の主人公の同窓生ということで、最後の最後に『家守綺譚』の話と一致する場面がある。「エフェンディ」、これは本文中の説明をそのまま引くと、「おもに学問を修めた人物に対する一種の敬称だが、彼(ムハンマド=村田の下宿先の使用人 byとみきち)からそう呼ばれると、ちょうど日本で商売人が誰彼となく先生と呼ぶのと全く同じ印象を受ける」とある。「滞土録(たいとろく)」の「土」は「土耳古(トルコ)」の「ト」である。つまり、村田先生トルコ滞在録、ということになる。

続きを読む "『村田エフェンディ滞土録』 梨木香歩"

| | コメント (2) | トラックバック (4)

2005年2月12日 (土)

『タッチ・オブ・スパイス』 2003年ギリシャ映画

久しぶりに映画館で映画を見た。2003年テッサロニキ国際映画祭で最優秀作品賞など10部門で受賞した、ギリシャ映画きってのヒット作品。撮影も、いかにも映画の王道をいく映画という感じ。ハリウッド映画も嫌いではないけれど、私の好みの傾向は圧倒的にこういう方向だなと再認識して、しばし世界に浸った。

舞台は、1959年コンスタンチノープル(イスタンブール)。主人公の少年ファニス(7~8歳?)は、人生をスパイスや食材を売るおじいちゃんから学んで育っている。おじいちゃんは、スパイスで人生を語る。例えば「クミンは人を充足させ内にこもらせるが、シナモンは人を近づけ互いを見させる」。

ファニスの父がギリシャ人であるためにトルコから強制退去させられることになり、ファニスの家族は、コンスタンチノープルに残るおじいちゃんとプラットホームで別れの抱擁。涙を見せるファニスにおじいちゃんは言う。「泣くな。わしが行くのが遅れても、同じ星をわしも見ていることを思い出せ。空には見える星も、見えない星もある。いつも見えないものを語れ。人は見えないものに興味を持つ。料理も同じだ。塩やコショウが見えないと料理はまずいか? 違うだろう。それでも決め手は塩加減だ」

日曜日ごとに親戚が集まり、お祝いがあればまた集まり、女たちが伝統料理をつくる。積み重ねられてきた食の歴史と文化。精神のありかがあらわれる場所が食卓。さまざまな哲学が食を通して語られる。きりりと強くしなやかな美しさの女性たち、深い憂いを秘めた瞳を持つ男たち。食文化なくして豊かな人間の暮らしと言えるだろうか。

虚構のような日々が繰り返される現代にあって、人間の変わらぬ営みの力強さと正統性をもう一度信じたいと思わせてくれる映画であった。

トルコとギリシャ、イスラム教とギリシャ正教の間の確執、戦いといった歴史的・地理的な要素もベースにあるのだが、映画のテーマは、トルコ・イスタンブールに向ける熱い想い。それが、おじいちゃんを待ち続けるファニスの想いに込められて、映画全体を通して描かれている。その想いを結んでいるのがスパイス、なのである。たくみな脚本と、美しい映像、抑えた演技、織り込まれるユーモアとしゃれた警句。上質の映画だ。


ミーハー的感想を一言。大人になった主人公を演じるジョージ・コラフェイスは、渋くて、大変に素敵。好みだわー(ハート)。成長したサイメ役のバサク・コクルカヤの美しさに圧倒された。

日本向け公式サイトはこちら

| | コメント (2) | トラックバック (2)

2005年2月 8日 (火)

『ダーツよ、鉄の城を見張れ』 野村潤一郎

ダーツよ、鉄の城を見張れ
野村潤一郎著

出版社 世界文化社
発売日 2004.10
価格  ¥ 1,680(¥ 1,600)
ISBN  4418045155

bk1で詳しく見る オンライン書店bk1

 めちゃめちゃ濃くて、熱い、ホルモンまき散らしてるって感じの獣医さんによるエッセイ。実はこの本は、よしもとばななのホームページの日記で知ったもの。よしもとばななは、愛犬ラブ子(ラブラドール・レトリーバー)を癌で亡くし、とてもとても哀しんでいたのだが、本書野村のこの本だけが、犬を愛する自分の心が納得して読める本だと書いていた。

続きを読む "『ダーツよ、鉄の城を見張れ』 野村潤一郎"

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2005年1月 | トップページ | 2005年3月 »