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2005年7月 5日 (火)

『A2Z(エイトウズイ)』 山田詠美

A2Z
A2Z
posted with 簡単リンクくん at 2005. 7. 5
山田 詠美 / 山田 詠美〔著〕 / 山田 詠美〔著〕
講談社 (2000.1)
通常2~3日以内に発送します。

これもお勧め! 山田詠美、巧い、巧すぎ。そして、真摯で、考えさせられる恋愛小説だ。タイトルのA2Zは、アルファベット26文字をあらわしている。各章のキーワードとなる単語は、Aから始まりZで終わる。

主人公の私は、35歳の文芸編集者、夏美。他社の文芸編集者である夫、一浩は、たまに同じ作家を受け持つことがあるライバルでもある。夫が、恋人がいることを白状した。そのこと自体がaccident。夫は、そのことを夏美に言いたかったのだと言う。夏美も実は、25歳の恋人がいる。会社のそばの郵便局員、成生(なるお)。

夏美は、成生との恋を楽しむ。恋の始まりを楽しみ、恋に落ちていく過程を楽しみ、成生が恋する気持ちを語るのを楽しむ。夏美は、仕事にもエネルギーを傾ける。女友達との関係も大切にする。夏美にとって人生は、斜に構えて傍観しているものではない。渦中に飛び込んでいって、自分のからだや心や言葉で味わいつくすものだ。

恋は始まった途端に、終わる運命にある。夫婦っていうのは、それでは何なのか。夫婦の持続と、他の異性との恋愛は成立するのか。夫婦のかけがえのなさとは何なのか。そういうことを、日々考えて暮らしている夏美。

夫婦で交わす会話。

「小説ってさ、なんで、あんな大昔からあるのかねえ」

「必要だからだろ?」

「でも、なくたって良いものな訳じゃん。実際、本、読まない人だっているんだしさ」

「そういう人たちも、きっと、文学に代わる何かを必要としてると思うよ。肉だって、生のまま切って出されてもうまくないじゃん。いくら刺身が新鮮なのが良いったって、海で泳いでる魚に囓り付く奴いないだろ。手間をかけたものに出会わなかったら、ただ生きのびてるだけになっちゃう。世の中に一大事が起ったら、真っ先に淘汰されるのは文学だ、なんて嘯いてる作家、おれは嫌いだね。じゃ、止めればって、感じ」

恋を持続させるためには、双方が頑張り続けなければならない。長続きさせたいと双方が願っていても、最初の頃の恋の特別感は持続しない。会社の仲間、親友、夫婦、恋人、編集者と新進作家等々の会話は、それはそれは巧みで、うならせる。ここかしこに、どこかに引用するか、自分の言葉みたいな顔して使ってみたい表現がある。山田詠美、小説づくりが何故にこれほど巧いのか。

とはいえ、本書が嫌いな人もいるかもしれないと、ふと思った。それは、「恋」というものが世の中にあることを憎む立場の人、とでも言おうか。「浮気される立場」に常に自分を固定して考えている人、と言うべきか。そういう人から見たら、この小説は随分不謹慎に思えるのかもしれない。「あの時、会いたい優先順位は彼女が一番だったけど、失いたくない優先順位は、いつもナツだった」なんてぬけぬけと言う夫、どうですか? 私は、こんなことを妻に向かって言う一浩が、かなり好きです。

足を引っ張り合うのではなく、互いに牽制し合って生きるのでなく、競い合っている二人。自分の弱点を自覚したうえで、それを相手に受容してもらう心地よさを知っている、適度にずるく、賢い大人たち。

身をこがすような恋も素敵。でも、交わす言葉が通じ合う相手というのは、そうそう見つからないものではないかしら? 相手の何から何まで知り尽くして、まるで相手の主治医にでもなったような気持ちでいたのに、まだ知らないことがあったという発見を、素直に認めることができる、賢い大人たち。どの登場人物に共感しつつ、この小説を読みますか。

読売文学賞受賞

文庫も出ています。

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コメント

困りますっ!
そんなふうにお奨めされたら(笑)。

> 「あの時、会いたい優先順位は彼女が一番だったけど、失い
> たくない優先順位は、いつもナツだった」なんてぬけぬけと
> 言う夫、どうですか? 私は、こんなことを妻に向かって言
> う一浩が、かなり好きです。


うわああ、わたしもかなり好きです(^o^)。
こりゃー、お奨め本リストがまたしても積ん読山になりそう。とみきちさんのお奨めにはいつも参っております。

投稿 ピピ | 2005年7月 8日 (金) 19:26

>ピピ姫さん

毎度どーも(笑)。まただまされてやってくださいなぁ。

大丈夫、この本は一日で読めますから。(降りる駅を乗り越しても責任とりませんが)

フーコーの合間にでも、おやつがわりにどうぞ。あ、フーコー月間はもうとっくに終わってるのでしたっけね。

あ、そうそう、恋愛中に読むと、とっても良い、と友達が言ってました。

投稿 とみきち | 2005年7月 8日 (金) 21:40

> 恋愛中に読むと、とっても良い、と友達が言ってました

わっかりましたぁ! 早速恋します。

投稿 ピピ | 2005年7月 8日 (金) 23:45

ピピ姫さん

>わっかりましたぁ! 早速恋します。

んも~~~っ、言うことなしのベストなリアクション!

投稿 とみきち | 2005年7月 9日 (土) 00:24

さらりとワインの水滴を指先でなぞって、
光る文体に恋しました。

こういう本を書く人だとは、知りませず・・
食わず嫌いの本嫌いのてふが、夢中になりました。

一陣の風が吹き、GSの男の子にくらり・・
あらら、危険であります。(@^^@)

突然、お邪魔して失礼しました。

投稿 tehu | 2005年7月18日 (月) 10:36

>てふさん

こんにちは。
お気に召して嬉しいです。
読んでいる間、別の世界に連れていってくれますよね。『風味絶佳』も良いですよ!

投稿 とみきち | 2005年7月18日 (月) 13:58

>てふ さん

はじめまして。
お気に召して嬉しゅうございます~。
現実を忘れて没頭できる小説、でしょ。
ほんとに小説上手です。

投稿 とみきち | 2005年7月18日 (月) 15:09

>てふさん

いらっしゃいませ。
本嫌い、なんですか?
それはまた、なにゆえに。

でも、夢中になれる本に出会えて、良かったですね。

投稿 とみきち | 2005年7月19日 (火) 02:01

突然の書き込みにきちんと、コメントを下さって有難うございます(@^^@)

てふの本嫌いは、目が疲れる=眠くなる のでした。
とはいえ、ぼんやりと過ごす=あらぬ思考を飛ばす=現実からの遊離 が、好きなので、小説自体は、嫌いではないのです。

今回、本読み中は、周囲の声がけも、仕事もうつろ。相当、この本に没頭していました。満足!でも、すぐにこの人のほかの作品をと、喉が渇いてきました。

投稿 tehu | 2005年7月19日 (火) 22:07

>てふさん

あれま、コメントが三つになってる!
昨日、ココログが不具合で、コメントが書き込めず、エラー連発だったんですが、今になって蘇ったのですね。まあまあ、まるで、てふさんを恋いこがれているかのように(笑)。

投稿 とみきち | 2005年7月20日 (水) 01:17

はじめまして。朗読にはまっています。で、A2Zを、はじめと終わりの部分、丁度制限時間15分で収まるのです。本日稽古で披露しました。私が下手だったのだと思いますが、ケチョンケチョンでした。本番は6月。それまでになんとか・・・。いきなり図々しいと思うけど、アドバイスなど。私、他の人のように、高校の教科書的な作品は朗読したくないのです。風穴を開けたいの、この作品のように。

投稿 キム | 2006年4月16日 (日) 19:48

>キムさん

はじめまして。
コメントありがとうございます。

朗読ですか! はじめと終わりの部分というと、「a」と「z」を連続して朗読するということなのでしょうか。

そうだとしたら、夫一浩の浮気をaccidentに遭遇したかのように驚く気持ちと、最後の夏美の気持ちのおさまりとの間に、たくさんの葛藤や時間があった、という感じが出せたらいいのかもしれませんね。

私は朗読についてはなーーんにも存じませんから、それをどうやって表現したらいいのかは全くわかりませんが、頑張ってください!

投稿 とみきち | 2006年4月16日 (日) 21:29

ありがとうございます!朗読部分は、冒頭と終わりにある「たった二十六文字で、関係のすべてを描ける言語がある。」これをキーにAからZのエピソード入れず、読もうと思うのですが、難しいかなあ、やっぱ。ちなみに私は50代のおばさんですが、息子が「おっさんやおばさんにはわっかんないしょ」と言ってました。朗読は、おばさんだけでなく、若人にも楽しんでもらいたく、2月の発表会には、岩井志麻子の「私小説」を朗読しました。がんばるよ、私。

投稿 キム | 2006年4月17日 (月) 09:39

>キムさん

>朗読部分は、冒頭と終わりにある「たった二十六文字で、関係のすべてを描ける言語がある。」これをキーにAからZのエピソード入れず、読もうと思うのですが

なるほど、ストーリーの導入と結末のところですね。AからZで描けることがあると考えるところから始まって、人の関係はそう簡単に描けるものではない、というまとめで終わる。

それなら「AからZで表すってどういうことよ?」と聞き手が興味を感じたら成功!かな?

頑張ってくださいね!

投稿 とみきち | 2006年4月17日 (月) 20:04

そうなんだけど、迷い始めて、A~Zのどこかをピックアップして読もうかと・・・。
仕事で慌ただしく。練習どころか、本を読む暇もありませぬ。ウウウ・・・

投稿 キム | 2006年4月20日 (木) 23:09

>キムさん

迷い始めちゃったんですか! あららー。朗読ってご自分の血肉になった文章でないと、なかなか難しいのでしょうね。時間がないほうが集中できるかもしれませんよ!

投稿 とみきち | 2006年4月20日 (木) 23:24

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