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2005年11月

2005年11月28日 (月)

『麦ふみクーツェ』 いしいしんじ

麦ふみクーツェ
いしい しんじ著
新潮社 (2005.8)
通常24時間以内に発送します。

とても豊かな物語でした。読み始めたときに、面白そうという予感がしたけれど、想像をはるかに超えた豊かさでした。「ぼく」は小学生に入ったばかりの頃、初めてクーツェに会った。それはある夜のこと、「とん、たたん」という音がして窓の下を見ると、運河があるはずのそこには、「黄色くだだっぴろい土地が、えんえんとつづいているばかり」で、玄関先には「へんてこな身なりのひとがいて、足元の土をふんでいる」。それがクーツェだった。

「ぼく」のおじいさんは、音楽が大好きで大好きで、まちの人を集めてアマチュア・ブラスバンドを仕切り、自身はティンパニを担当しつつ、アマチュアにあるまじき厳しさで、皆に稽古をつけるのだった。「ぼく」のお父さんは学校の先生なのだけれど、素数に取り付かれ、数学の証明に心を奪われている変わり者。

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2005年11月13日 (日)

『蒼穹の昴』 浅田次郎

蒼穹の昴 上
蒼穹の昴 上
posted with 簡単リンクくん at 2005.11.13
浅田 次郎著
講談社 (1996.4)
通常2-3日以内に発送します。
蒼穹の昴 下
蒼穹の昴 下
posted with 簡単リンクくん at 2005.11.13
浅田 次郎著
講談社 (1996.4)
この本は現在お取り扱いできません。

文庫本を再読した(講談社文庫は4分冊)。ストーリーを追いかけて終わった一度目に比較して、今度は、歴史的な背景や、作家の思い入れ等にも目配りして読むことができた。様々な要素を持った巨編なので、一言で言い表すのは難しいが、誤解を恐れずにあえて言うなら、「清朝の最後を描く劇画的大河ドラマ」であろうか。

作家は、実在の人物であろうと、架空の人物であろうと、具体的な描写に落とし込むことが得意中の得意である。声のトーンや、しゃべり方の特徴、物腰から、性質まで、とにかくものすごく具体的なイメージをしっかりとつくり上げ、それらの人物たちを自由自在に操ってみせる。

読者の想像力に期待することなく、というよりはむしろ、読者の想像力が発揮される余地を残すことなく、作家の想像力は存分にその腕をふるう。そこが文学的な香りよりもむしろ、エンターテインメント的あるいは劇画的な色合いが感じられる理由であろう。

さて、そのように描かれる豪華きわまりない出演者たちの頂点は言わずもがなの西太后。歴史考証をしっかりとおさえつつ、作家が創造した人物を配してドラマは進んでいく。浅田節ドラマを完成させるための登場人物の白眉は文秀と春児。二人は、本書の最初から登場し、運命の導くままに都に上り、それぞれの道を歩み始める。

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