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2008年9月 7日 (日)

『顰蹙文学カフェ』 高橋源一郎・山田詠美

文学ってもう終わりなのか? と暗い気持ちに高橋源一郎はなっていました。何故くらーい気持ちになっていたかということを示すために、源一郎は、こんな例を挙げます。

  • 「文学」に関するテレビ番組に出演していて、そこに集められた「平均的な若者」50名に向かって、スタンダールの『赤と黒』について質問をした。ちなみに『赤と黒』を読んだことがある人の挙手を求めたらゼロだった。『赤と黒』について知っている人の挙手を求めたらゼロだった。そして……スタンダールという名前を聞いたことのある人の挙手を求めてもゼロだった。。。
  • 大学の新入生で「本が好き」と自称する子たちを集めて話をしていた。最近読んだ本を聞いたら、何人かの子が流行りのケータイ小説を挙げた。そのほかの子が、何かのタイトルを挙げたので、どんな小説か質問したら、うまく答えられない。「ケータイ小説?」「違うかも」「それ、文庫本だった?」「先生、文庫本って何ですか?」

そんな不安を山田詠美にぶつけて、おおいに文学の話をしたのでした。そして、源一郎は詠美に問いかけます。「もうずっと前から、『文学』なんかどこにもなくて、ないのに、『文学』『文学』とか言ってるとか思われて、『あんた、終わってるよ』っていう視線を浴びてるのに気付いてないのかも、って思わない?」

エイミー姐さんは言い放つのです。

「何言ってんのよ。誰が何言おうと関係ないわよ。わたしたちが『文学』なのよ!」

さて、こんな二人が、文学をサカナにゲストを迎えて、文学について話をするという趣向が本書です。

ゲストは次のとおり。

  • 島田雅彦
  • 中原昌也
  • 車谷長吉
  • 古井由吉
  • 瀬戸内寂聴

スゴイ濃いメンツです……。面白いですよ~。

実は私、本書を読んだのは2カ月以上前のこと。6月22日の「とみきち雑記帳」には、こんなふうに書いています。

欲望に負けて、『顰蹙文学カフェ』を読み始めてしまったら、中原昌也が面白すぎ。なんなんだろう、この人は。うーん、スルメのように頑固に、「小説を書くのは嫌いだ」と言い張る。確かに彼の小説を読みたいとは思わないけど(爆)、この鼎談は面白すぎる。山田詠美と高橋源一郎が親戚のおばさん、おじさんのように、彼のことをかまう、かまう。いや、もう最高。

「群像」の連載なんですよね~。こういうのに同席してテープ起こしをしたい~。是非是非っ!!

でですね、第18回Bunkamuraドゥマゴ賞が発表されたのですが、選者が高橋源一郎、受賞作品は『中原昌也作業日誌 2004→2007』。サイコー!!

この対談でも、いきなり中原昌也は遅刻をしてきます。

高橋 君ね、先輩が待ってるんだから、直前に来なさいよ。

中原 すみません。

山田 サバ読んで時間を教えておけばよかったね。

高橋 それで買い物してたんだ?

中原 まあ大丈夫かなと思ってぼーっとしてたら……。

山田 いきなり顰蹙だ。今月は、ぴったりの人選ですね。

中原 すみません、本当に。じゃ、もうビールください(笑)。

高橋 もう要りませんと言うのかと思ったら……。

中原 いやいや、もうって、まだ何ももらってないですから(笑)。

山田 タクシー代がなかったって本当なの?

中原 千円しかなかったんですよ。(中略)ちょっと理由を話させてくださいよ。本当に僕、今かなりウツぎみで、相当自暴自棄になってるんですよ。きょうはお金があるからちょっと使わないと、買い物しないと死ぬとか思って……。

文章から、源一郎が呆れて、辟易して(しかもそれを喜んでいる)のが伝わってきて、めちゃめちゃおかしいのです。これが、ドゥマゴ賞受賞記念対談で見られるのかと思うと(希望を出しただけで、参加できるかどうかわかりませんが)、ものすごーく楽しみです。

車谷長吉も、古井由吉も、しゃべっているうちに「業」が見えてきて、本当に楽しい対談です。文学の世界を裏木戸から覗いたような、ちょっとミーハーな気持ちで読めます。

高橋 さっきも言ったけど、車谷さんは世捨てというか、一回都落ちしたというイメージがあるんだけど、どう考えてもそれは嘘。主観的にはそうかもしれないけれど、客観的にいうと、車谷さんは見捨てられていないわけだから。それだけずっとオファーがある人は、現役でもそんなにいないと思うけど。

山田 そうだよ。そんなに作家とか編集者がずっと待ってるなんて。それを自分では恵まれているとは……。

高橋 思わないんだ。帰ってきたらいきなり百万円出してくれる人はいるし、職も紹介してもらえるし。

車谷 それが結局、世捨人になるために恵まれていたのか、作家になってまずかったなというのが四十九パーセントある。

高橋 まだあるんですか。(笑)

車谷 強くある。真実、作家になってまずかった。

高橋 でも、作家以外のものには……。

車谷 坊さんですよ。

高橋 坊さんになれたと思います?

車谷 なれたと思う。

山田 俗世を捨てるには、きょう聞いていたら、あまりにも煩悩が多いのでは。

車谷そうなんだね(笑)。

あっという間に読めますが、このゲストたちの書いたものを、もう一度読んで検証してみようじゃないの、という気持ちになりますよ。

ところで、スタンダールの『赤と黒』、読んだことありますか?(笑)

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コメント

すごい~カッコいい~~~~

さすが詠美姐さん。永遠ですね
今度、読んでみます。

あ・・・・「赤と黒」も読んでみます(笑)

投稿: nozo | 2008年9月 9日 (火) 02:10

>nozoちゃま

こんにちは~
詠美姐さん、文学に対しては熱~いですからねえ。

でも、対談の中ではさりげなく気配りの人、でもありました。

食えない人たちばかりで面白いですよ。

投稿: とみきち | 2008年9月 9日 (火) 12:55

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