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2008年10月

2008年10月24日 (金)

『母の手紙 母かの子・父一平への追想』 岡本太郎

岡本一平・かの子夫妻と、その一人息子である太郎は、昭和四年、家族そろってヨーロッパに向けて旅立った。太郎がパリを本拠地として暮らすあいだ、両親は主にイギリスに滞在し、三年後に帰国する。そして、それから昭和十四年、かの子は亡くなる。ヨーロッパで離れて暮らすあいだ、かの子が太郎に送った手紙、日本に帰ってから、パリの太郎に書き送った手紙、それから、かの子の死に際して、海を隔てて、父が息子あてに送った手紙が掲載されている。手紙の前後に、太郎による注釈が加えられている。岡本一家の絆を知るためには格好の書になっている。

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2008年10月22日 (水)

『八日目の蝉』 角田光代

小説という形式でしか表現できないものがある。本書を読んでそう感じた。そして思った。角田光代は小説家になるために生まれてきた人なんだなぁと。

主人公の希和子は、不倫相手の赤ん坊を家に忍び込んで誘拐し、逃亡しながら育てていく。そのシーンから始まる小説なのだから、安心して、にこにこ笑いながら読めるようなストーリーではない。そのシーンを0章として冒頭に配し、続く1章からは、希和子の一人称で話が進む。小説の構成としてすばらしいのは、誘拐された赤ん坊の一人称で展開する2章があること。恵理菜は大学生になっている。

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2008年10月20日 (月)

エル・ライブラリー 大阪産業労働資料館オープン間近!

エル・ライブラリーは、2008年10月21日(火)午前10時に、リニューアル・オープンします。

予算も人手も少ないなかの困難な船出ですが、この再出発が、一つの大きなステップになることを願っています。

皆様の支援や協力が必要です。

ご関心のある向きは、ぜひご注目いただければと思います。

また、可能であればサポートもよろしくお願いいたします。

リニューアル・オープンの情報はこちら

サポート会員募集の案内はこちら

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2008年10月19日 (日)

『邂逅』 多田富雄、鶴見和子

多田富雄と鶴見和子による往復書簡。両者とも脳梗塞で倒れたあとのやりとりでありながら、多田富雄・柳澤桂子の往復書簡『露の身ながら』(←読書日記はこちら)に比べて、専門的な話題に終始しているのが印象的。特に鶴見和子が旺盛な知識欲にあふれていることに圧倒される思いで読み終えた。

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『患者の孤独 心の通う医師を求めて』 柳澤桂子

著者が、30年に及ぶ闘病生活のあいだ、病気と認められず、「心の通う医師を求めて」ドクターショッピングを続けてきたその経過を、感情をできるだけ排することに努めて綴った記録。

医師からは、「問題ある患者」、「心身症に決まっている」、「病気のはずはない」、「いいかげんにしろ」、「どこも悪いところはない」と言われたこともあったし、間違った処方をされて、その薬の副作用で新たな症状が出たりりもした。詳細は、本書及び『認められぬ病』をお読みいただきたいが、本書の 「私の病気は何だったのか」の章には、病気がステージに区切ってまとめられているので、そこから書き写してみると、① 1969年のめまいによる入院、② 1978年の子宮内膜症の手術のあとに始まった周期的な嘔吐発作と腹部激痛。③ 1989年頃から始まった排尿障害と便秘、そしてひどい心房性不整脈。④ 1990年頃から始まった足のしびれと感覚麻痺。しびれは左足からからだの上のほうにのぼってくると同時に、右足にも発生。そして、⑤ 2002年に始まった重い起立性低血圧、という五つぐらいのステージに分けられるようだ。

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『中原昌也作業日誌 2004→2007』 中原昌也

第17回Bunkamuraドゥマゴ賞を『作業日誌』で受賞した中原昌也は、審査委員の高橋源一郎との受賞記念対談で、文筆おさらば宣言をしました。

BunkamuraのHPを見ると、「パリの『ドゥ マゴ文学賞』(1933年創設)のもつ先進性と独創性を受け継ぎ、既成の概念にとらわれることなく、常に新しい才能を認め、発掘に寄与したいと1990年に創設されました。」とあります。「発掘」したはずの作家に、「やってらんない、やめた、やめた」と言われてしまったというわけで、大変に面白いことになったものです。対談に本人が遅刻せずに現われるのか、といった懸念すらある中原氏でありましたが、周囲の心配をよそに、しらふで、遅刻もせずに登場。非常に機嫌良く、感じよく、朗らかなる対談になりました。その対談の様子は、雑記帳に書きました。(こちらこちら

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2008年10月18日 (土)

『寡黙なる巨人』 多田富雄 (第7回小林秀雄賞受賞)

『免疫の意味論』の著者で、世界的に著名な免疫学者である多田富雄が、2001年に脳梗塞で倒れた後、構音障害によって、音を発することができなくなり、右半身は麻痺し、嚥下障害も併発する、という重度の身体障害になった。幸いなことに、知能の損傷は全くなかったが、からだの多くの機能が損なわれたのである。しかし、著者は倒れて二ヶ月後、失った声を代替する表現手段としてワープロの操作を生まれて初めて習い始め、左手だけで一字ずつ打って文章を書き始める。リハビリを繰り返しながら、倒れた前後のことをエッセイとして発表するまでになり、以来、あちこちに書いたエッセイを集めて一冊の本にしたものが本書である。

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2008年10月17日 (金)

とみきち屋番頭の「秋も一箱古本市」体験記(3)

一番印象に残っているお客様の話から始めたいと思います。
かわいい二人のお嬢ちゃんを連れて来られた若いお父さんのお話です。

■ 五味康祐  『五味手相教室』、井筒俊彦 『ロシア的人間』

二歳ぐらいの妹さんを抱っこしながら、五味さんの本を手に取られました。とてもお若い方なので、番頭が「五味さんをご存じですか?」とお尋ねしたら、「いいえ、知りません」。そこで、番頭が、五味さんは本来剣豪小説を多く書かれた作家なんですよ、などとご説明しているあいだ、3~4歳ぐらいのお姉ちゃんは、お隣もす文庫さんのお手製缶バッジに目が釘付け。さらに、釘付け状態から、行動に移りました。両手に一つずつ握りしめ、番頭と話しているお父さんに「ねえねえ、これ買って~」と静かに、しかし粘り強くアプローチ。二つ持っているのは、お父さんに抱っこされている妹さんの分も、というお姉ちゃんとしての配慮でしょうね。お父さん、初めは「お母さんが一緒のときに買ってあげる」と諭していましたが、お姉ちゃんは、ぎゅっと握って放しません。結局、お父さんも根負けして、ご自身には『五味手相教室』を、お嬢ちゃんたちには缶バッジ二つを購入されました。

 その間、実は、「ロシアの広場」の棚から『ロシア的人間』を手に取って、ぱらぱらとご覧になっていました。「以前、この人(井筒俊彦)イスラム関係の本を読んだことがあるので、ちょっと気になって・・」と。しかし、缶バッジを見事手に入れ満足したお嬢ちゃんに手を引っ張られて、立ち去られました。

 しばらくして、またお父さん登場。再び『ロシア的人間』に手を伸ばされます。店主が「先ほどはありがとうございました」とご挨拶したら、お嬢ちゃんが迎えに来ました。「おとうさん、あっち~」。どうやらお母さんも合流されたようです。慌てて本を棚に戻し、「僕、最近手相をちょっと始めたんですけど、さっきの本、すごく面白いです。ありがとうございました。またあとで買いに来ます~」と言い残して立ち去られました。

 時が過ぎ、『ロシア的人間』に興味を示される方が多く、お取り置きしようかどうしようかとても迷いました。でも、だんだん終了時刻の5時も近づき、秋の日暮れは早いので薄暗くなってきました。幼いお嬢さん連れですから、もういらっしゃらないなぁと思っていましたら、終わる間際にお父さん一人で登場。なんとなんと、お約束どおり『ロシア的人間』をお買い上げいただきました。本をめぐってこういう出逢いがあったことが、本当に嬉しかったですね~。終了間際に、私ももす文庫さんの缶バッジを一つ買わせていただきました。お嬢ちゃんたちと(ひそかに)お揃いです。

今なお心がぽかぽか温かくなってくるような、楽しくて、嬉しい出逢いでした。
五味康祐に関しては今回、クラシック音楽本が番頭の一押し。しかし、なぜか突然、変わった著書も混ぜてみようという気になりました。不思議なものです。その本が、あの素敵なご家族との出逢いを導いてくれたのですから。

で、『五味康祐 音楽巡礼』、『五味康祐 オーディオ遍歴』(新潮文庫)は、ずっと探し求めていたとおっしゃる方の手に渡っていきました。その方の満面の笑みが忘れられません。ひょっとしたら、同じ時間に同じ本を繙いているかもしれないなーそんなふうに思いを馳せることができるのも嬉しいことです。大好きな本なので。

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2008年10月16日 (木)

とみきち屋番頭の「秋も一箱古本市」体験記(2)

古本市では思いも寄らぬご褒美をいただきました。ありがとうございます。「ただただ本が好きなだけ」という芽に水を注いでいただいたーそう受けとめています。「よ~し、一念発起していい本を集めるぞ」なんて似合いませんし、専門的な知識もありませんから無理です(笑)。1冊でも多くいい本に巡り逢えたら。そんな気持ちでこれまでどおり新刊書店、古本屋さんを徘徊するのみです。

それでは、予告したエピソード編。番頭の選書が偏っておりますため、ご存じない本の場合イメージが湧きにくいかもしれませんが、お客様とのやりとりをお楽しみください。とみきちのイメージを崩すことなどおかまいなしに、ガンガンいきます。

     『テロルの現象学』 笠井潔 ちくま学芸文庫

ミステリー、エンターテインメント小説などで知られている著者ですが、ファンは少ないのでは。私の知る限り作家吉本ばななくらいか。フッサールの現象学を用いて謎解き。ハイデガーやフーコーを思わせる人物が主人公と哲学論を交わしたりするのですから、好みでない方には全く合いません。ちなみにとみきちは私の薦めで、『バイバイエンジェル』を読了し、『哲学者の密室』に挑戦しましたが、イントロのみで「気持ちが悪くなった」と言って投げ出し、何年か経ってチャレンジして、再びイントロで挫折。その後は「笠井潔」の名前を出すと顔をしかめます。辞書のように分厚い単行本を見るたび、「文庫もあるんだから、どうにかしてよ。段ボール詰めの本がうちじゅうを占領してる!」とご機嫌ななめ。以下、そんなとみきちがお客様と交わした会話です。

本を手にとられ考え込んでいる男性のお客さまに、店主(とみきち)「笠井潔お好きですか?」「う~ん、はまりそうで恐いので、今までは敬遠していたんです」「先ほど、いかにもお買い上げになりそうなお客さまがいらしたんですよ」「えっ!!!! 笠井潔が好きなタイプってわかるんですか?」「あっ、そうじゃないですよー。もう少しでお買い上げいただけそうだった、という意味です。まだ残っているということは、お客様をお待ちしていたんですねー。これもご縁ですから、思い切って、ここで一歩踏み出してみる! っていうのはいかがでしょうか」「……よ~し、思い切って買っちゃおう!」

実は、この本の引き取り手はまず現われないだろうと思っていました。「なくなったよ」と、とみきちから聞いて驚きました。さらに売れた時の話を聞いて愕然。信じられませんよね、この性格。ああ、でも買って頂いた(30歳ちょっとくらいの)男性とお話ししたかった。とみきちは笠井本が減ったことに満足気ですが、ここだけの話、単行本以外に全く同じ文庫本を持ち歩き用に所有しています(笑)。 ← こら~~~byとみきち)

■『マヌ法典(サンスクリット原典全訳)』 渡瀬伸之訳 中公文庫

今回の目玉商品の一つ、『マヌ法典』を真っ先に手に取ったお客さまがいらっしゃいました。店主一人で店番をしていたときのこと。「あのーー、『マヌ法典』をご存じですか?」「いやー、最近ちょっと遺跡の勉強を始めたので、やっぱり手元にあったらいいなぁとは思うんですけどね、値段が高くて」。(自分で値付けをしていない店主は、幾らだったか忘れている)「そうですか。幾らにしていましたっけ?」(値段を確認して)「あーー、4,000円。高いですよねー。すみません。いいです、いいです、お買い上げいただかなくて。うちも、看板代わりに出しているようなものですから。すみませんね」と言って、元の場所に戻す。そのうち、お客さまが立て込んできて、その方は立ち去られました。

そして、数分後、戻って来られたそのお客さま、「やっぱり『マヌ法典』、買うことにしました」「ええっ?!! いいですよ、買わなくて。これ、高過ぎますから」「やっぱり手元に持っていたいかなと思って」「本当によろしいんですか? うわ~~、『マヌ法典』、お買い上げ~~~~!! ありがとうございます~~!!」

とみきちの喜びの声を聞き、番頭はお礼を申し上げるため、お客様の元へ。早稲田青空古本祭月の湯古本まつり、そして秋も一箱古本市と連続で回られ、特に早稲田では図版入りの高価な本を購入されたとかで散財のご様子。なのに、まさかお引き取りいただけるなんて。「どうやってこの珍しい本を手に入れたんですか?」とお客様に訊かれました。「若い頃、これは読んでおかなくてはと購入したのですが、半分も読まずにギブアップしてしまいまして。その後箱の奧に眠らせていたのですが、珍しい本と知り、今回出品させていただきました。価値の分かる方に渡った方がいいのではないかと思いまして。そのわりには、このような値段をつけてしまい、すみません」と正直にお答えしました。どうか、『マヌ法典』があの方(年輩の男性)のお役に立ちますように。

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2008年10月14日 (火)

南陀楼賞をいただいてしまいました!

なんと、なんと、びっくり仰天なことに、初参加の私どもが栄えある南陀楼賞をいただいてしまいました。パンパカパーーン!! 嘘だと思ったら、こちらをご覧くださいませ! ね、ね、ホントだったでしょう? 写真までご紹介いただきました。うわ~~、大変だ。

ご存じの方は既にご存じのことですが、とみきち屋の選書担当は100%、番頭ですからね~。この際、番頭自身が本に関するブログを始めたらどうかとそれとなく(というか、再三・笑)勧めたりしているのですが、私のように、調子よく、いいかげんなことは書くことができない性質のようで、うんと言わないのでございます。

店主とみきちのブログは本来、読書日記ですが、本全般についてのコメントやおしゃべりもどうぞお気軽に書き込んでください。番頭とともに「とみきち屋」として、このブログの中でお返事を差し上げて、楽しくおしゃべりさせていただきたいと思います。

「秋も一箱古本市」を存分に楽しませていただいたばかりか、賞までいただいて(南陀楼さん、何をくださるのかなぁ、楽しみだなぁ、でも、次にお目にかかれるのはいつかなぁ)、身に余る光栄でございました。

感謝を込めて、ご報告でした。

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とみきち屋番頭の「秋も一箱古本市」体験記(1)

「とみきちの読書日記」を目当てに来られた方には申し訳ありませんが、今回とみきちが古本市に初参加いたしました関係で、番頭(=とみきちのツレ)も「とみきち屋(出店名)」の一員として、関係者の方々への御礼も含め、体験記を書かせていただくことになりました。自身のブログを持っておりませんので、ほかに手だてがございません。また、一部とみきちの書いたものと重なるかと思いますが、どうかご容赦ください。

主催者の方々、ボランティアの方々、大家さんをはじめ地元の方々、これまでに参加された店主の方々、そして足を運んでくださる多くのお客様によってつくられてきた一つの「文化」だと感じました。皆様のおかげで全くの素人の初参加にも関わらず、ほんとうに心地よく過ごさせていただきました。心より御礼申し上げます。

隣で店をかまえられた、もす文庫さん、あいうの本棚さん、がさつなところが多く随分ご迷惑をおかけしたはずなのに、温かく接してくださりありがとうございました。そして、何度も声をかけてくださり、丁寧なアドバイス、面白いお話をしてくださった四谷書房さん、たいへん心強かったです。さすがにプロの品揃えは違うなあとため息がもれ、趣味の域を出ない私どもの箱がこどものおもちゃ箱のように感じられました。探していた中野好夫『人間うらおもて』(ちくま文庫)を安価で購入でき嬉しかったです。山村修(狐)の単行本ほか、持っていなければ購入したい本がたくさんありました。

開店前に早くも箱をながめている方がいたばかりでなく、ほぼ絶え間なくお客様が訪れて来られ、驚きました。

若い頃より客として古本屋通いを続けて来たものの、売る側は初めてのこと。素人ゆえ、自分の蔵書の一部をしげしげと見られるのは恥ずかしいやら、緊張するやら。値段を確認された途端に本を戻されると、「う~ん、高かったか。いかんな」と消沈。本を手に取ってから食い入るように本を確かめられると、「ヤケが目立つのかな」「カバーにやや折れた跡があるためご不満かな・・」と不安が募ります。しかし一方では、自分も古本屋ではこんな感じで本を手にしているのだろうなと、自らの姿を重ね合わせ興味深く見ることもできました。

出品した本が1冊また1冊と売れていく都度、「ああ、自分と同じような興味を持っている方が思いのほか多いのだ」「たぶん難しいだろうなと思っていたおまえ(本)も引きとってもらえたのか」と嬉しくなります。なかでも思い入れの強い本については、探し求めている方の手に渡ってほしいと念じていたので、その願いが叶ったときは嬉しさも格別。そればかりか、「ずっと探していたのに手に入らなかったんですよ。今日は足を運んでよかった」と笑顔で声をかけていただけたとあれば、喜びもひとしおです。

番頭である私は、選書と値付け及び運搬が役目でしたから、お客様の対応は9割方店主とみきちに任せました。人見知りせず、相手に合わせて調子よく話せる人間が接することで、お客様も安心してゆっくり本をご覧になれるのではないかと思った次第です。実際、怪しげな番頭が店頭で待ちかまえていたら、売れ行きはもっと厳しかったのではないかと思えます。とはいえ、正直なところ、傍らあるいは少し離れた後ろから見ていて冷や汗をかくこともありましたし、「おいおい、そりゃあ押し売りだろ」という場面もございました(笑)。

青秋部の中村さん、石井さん、わずかな時間ではありましたが、お話しでき、嬉しく思いました。噂どおり、いや噂以上に素敵なお二人でした。これだけのイベントをとりまとめるご苦労は並大抵のものではないと思います。私どもの質問にも、お忙しいはずなのに驚くほど速やかに、また細やかなご返事をいただけましたので、楽しみながら出店準備を進めることができました。事務的なところは微塵もなく、初参加の不安を拭ってもらえるような、心温まるメッセージをありがとうございました。室生犀星に興味をお持ちとお伺いした石井さんには、犀星本をむりやり押しつけてしまって、恐縮いたしております。

古書ほうろうのお二方にも御礼申し上げます。私どもが集合30分前宗善寺に到着して、境内に荷物を運び入れてしまったにもかかわらず、すでに待機されていた女性の方にはやさしく声をかけていただき、気持ちを落ち着けることができました。男性の方からは、開店まもない頃、「テーマを設けていて、いいですねぇ」と過分なお褒めをいただき、「結果がどうあれ、一日楽しもう」と勇気が湧きました。当日お名前を尋ねるタイミングを逸し、イニシャルすら書くことができず申し訳ありません。近いうちに是非お店のほうへ伺わせていただきたいと思っています。(← 古書ほうろうのお二方、もしお読みになっていたら、是非コメントください~。お名前がわからないので、お名前を呼びかけることもできません。是非是非よろしくお願いいたします。by とみきち)

参加してほんとうによかった。貴重な体験ができたというのが偽らざる感想です。出店数の多い光源寺会場を見に行く余裕はなく、ライオンズガーデン谷中三崎坂会場を駆け足で回っただけですが、私どもと同会場のお店の方々も含め、皆さんの箱にはそれぞれの思いがいっぱいにつまっていて、独特の世界が拡がっていました。サブカルチャー、歴史、建築、デザイン等、私どもの守備範囲外の品揃えであっても、見るだけでわくわくしました。

慌てていたため、店名は覚えていないのですが、ライオンズガーデン谷中三崎坂の、私がナボコフの未読本を購入したお店の方には、約束通り当店にもお越しいただき、福原麟太郎『チャールズ・ラム伝』、吉田健一『東西文学論日本の現代文学』(いずれも講談社文芸文庫)をお持ち帰りいただきました。また、小さな本棚でお店を構えられていた方、5分足らずの立ち話でしたが、楽しかったです。棚の後ろに積んでいらっしゃった村上龍vs村上春樹『ウォーク・ドント・ラン』、持っているとはいえ手が伸びそうになりました。「こんな良心的なお値段で美本なのに、どうして棚出しされないのですか?」とお尋ねしたところ、「興味のありそうなお客様がいらっしゃったらそっと出したいからですよ」とにっこり答えられたので諦めました。「いいなあ、こういうポリシー」と思わずほっこり。でも、正直言えば欲しかった(笑)。手元にあるものは茶色に変色し、折り跡だらけなので。

マップを手に会場を回っていらっしゃる多くの方々の穏やかな表情に触れることができたことも、強く印象に残っています。どことなく満足気なお顔をされている方は、きっと素敵な出逢いがあったのでしょう。古本のみならず、各店が手作りの品やこだわりの品を用意して、出品したものを通じて多くの人たちとの交流が持てる。購入していただけたか否か、言葉を交わせたか否かではなく、あの何とも言えない空間を共有できる――それが大きな財産なのではないかと思えてなりません。

最終的には85冊、46,600円の売上げとなりました。正直、身に余る結果です。また参加できましたら(参加したいと思っています)本好きの方々に還元させていただきたいと思っております。

最後になってしまいましたが、わざわざ時間を割いてお越しくださったばかりか、お買い上げいただいた店主とみきちのご友人の方々にも御礼申し上げます。ありがとうございました。

次回は、とみきち屋が出品した本と、お客さまとのエピソードなどについて、とみきちとともにご紹介したいと思っております。

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2008年10月12日 (日)

「秋も一箱古本市」、大変楽しゅうございました。

初参加のとみきち屋、「秋も一箱古本市」を本当に堪能させていただきました。最高に楽しい秋の一日でした。青秋部の皆さま、大家さんの宗善寺さん、そして、参加された店主の皆様、お買い上げくださったお客さまのおかげです。本当にありがとうございました。こんなに楽しいなら、次回も参加したーい! という気持ちです。

スタートの11時ギリギリまでかかってなんとか展示し終えたときは、どうなることかと思いましたが、この催しはとても人気があるようで、開始前から有り難いことに会場にはお客さまが大勢見えました。「一箱古本市」が根づいているのだなぁ、とスタートから実感しました。

楽しかったことはさまざまありますが、やはり一番嬉しいのは、「この本を探していたんです。今日は来た甲斐がありました」などと、喜んでお買い上げいただけるときです。古本がただの古本でなくなる瞬間です。ああ、この本はこの方に出会えて、もう一度生きるのだなぁと思えるからです。

また、迷っていらっしゃる方に、ご興味の方向をそれとなくお伺いして、お話ししているうちに気が合って、「それじゃ、買っていこうかな」とお買い上げいただけるのも、嬉しかったですね。

あるいは、何かの本をふと手に取られたお客さまに、「その作家さんがお好きですか?」とか「○○の分野にご関心がおありですか?」とお尋ねすると、そうではなくて、ふとタイトルを見て手に取ったとおっしゃることがあります。そういうときは、その本はどんな感じの本ですよ、とご説明すると、「それなら」とお買い上げいただくこともありました。

あるいは、迷いに迷って、何度も足を運んでくださって、ついにお買い上げいただけた方には、「さっき売れそうになりましたけど、まだありましたよ。戻って来てくださるのを待っていたんですね」なんて言ってしまったり。「プレッシャーだ~」と言われても、そういう方は結局はお買い上げいただけることが多かったですね。

古本市というのは、元の持ち主から新しい持ち主に、一冊の本が笑顔でバトンタッチされるのが楽しいのですね。やみつきになりそうです(笑)。

両隣のあいうの本棚さん、もす文庫さんが美しく、センスよく展示されている間で、“ざ・古本屋”な感じの、無粋な箱が左右に出張ってお騒がせいたしました。一緒におしゃべりできて、なごませていただきました。ありがとうございます。

また、ブログのみでのご挨拶だった四谷書房さんにも直接お目にかかることができて、嬉しゅうございました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

また、ミーハーですが、岡崎武志さん、南陀楼綾繁さんにもお目にかかって、お話しさせていただくことができて感激でした!

売上結果を青秋部にお出しした集計は正確ではありませんで、少なめの申告になってしまいましたが、帰宅後確認いたしましたところ、本日お買い上げいただいた本は合計85冊でした。6時間で85冊ですから、1時間につき14冊、5分に1冊以上の割合でお買い上げいただいていた計算になります。忙しかったわけです。皆様、本当にありがとうございましたm(_ _)m

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2008年10月11日 (土)

「秋も一箱古本市」いよいよ明日。

さて、「秋も一箱古本市」、いよいよ明日です。スタートは11時。フライングは無し、だそうです(笑)。公式サイトはこちらです。お天気も良いようですので。「不忍ブックストリートMAP」を入手のうえ、ぶらぶらと気軽にお運びください。大家さんは3カ所で、「とみきち屋」は宗善寺にて開店させていただきます。

幼稚園の工作のようなことになってしまいましたが、とみきち屋の看板はこちらです。これを目印にお越しください。そして、ネット上でのお知り合いの方がもしお越しくださった場合は、必ず、必ず、お声をかけてくださいね~。お目にかかれるのを楽しみにしております。

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それから、こちらがPOPの写真です。POP作りはとても楽しかったですね~。「もっと作るのないの?」と番頭に聞いたら、「もう要らない」と言われて残念でした~。

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「秋も一箱古本市」が盛り上がりますように!

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2008年10月 9日 (木)

「秋も一箱古本市」出品本紹介(4)

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あんなにたくさんの本をどうやって運ぶつもり~?と思っておりましたところ、今夜、番頭がこのソフトスーツケースに(約10冊の本を残して)ほとんどすべてきっちり詰め込みました。魔法のようです。でも、本物の魔法じゃないので、重さを変えることはできず、ものすごく重た~~いデス。これ、いったいどうやって運ぶのでしょうね。 考えないことにしましょう。

さて、スーツケースの上に並べました三冊は、「山田詠美絶賛本三冊セット」でございます。

  1. ヤン・ウォルカーズ 『赤い髪の女』  (角川文庫・絶版)
  2. 倉橋由美子 『最後から二番目の毒想』 (講談社・品切れ)
  3. 吉屋信子 『自伝的女流文壇史』 (中公文庫)

1.は、講談社「IN★POCKET」2003年1月号掲載の江國香織との対談の中で、「私にとっての究極の恋愛小説」と紹介しています。

2.と3.はともに、河出書房新社「文藝」2005年秋号「特集 山田詠美」の中で、江國香織からの「おもしろい本(エクニ読むべし!)を、一冊教えて下さい。」との質問に対して挙げている本です。この二冊について、山田詠美は「どちらもまいりましたって感じで、しゅーん、です。」と答えています。

三冊セット2,000円でご提供します。限定1セットです! 山田詠美ファンの方はお早めにどうぞ!

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2008年10月 8日 (水)

「秋も一箱古本市」出品本紹介(3)

じゃじゃーーん。箱入れのシミュレーションをしてみました。こんな感じで本を入れまして、あとは、店の屋号とPOPなどをつける予定です。

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さて、昨夜ご紹介いたしました稀少本につきましては、番頭が今日になって、アマゾンの半額よりもさらに割り引いて出品したいと言い出しました。素人の初参加であることをわきまえての値付けをして、本当に欲しい方にお譲りすることができれば嬉しい、と申しております。

(店主といたしましては、「本当にこんなに高値で売れるのか?」、さらには、「売れ残った重たい本をたくさん持って帰るのはイヤだ」と内心思っておりましたので、この値下げの提案を聞き、ほっとした次第です。ついでに、200円均一コーナーも、少しではありますが、設けることとあいなりました。)

ただいま、本に挟むスリップ作成中~。

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「秋も一箱古本市」出品本紹介(2)

番頭が、以下のような企画を立てたと申しますので、ご紹介いたします。

1 ロシアの広場

・ナボコフ 『ロシア文学講義』(TBSブリタニカ 1992初版)『青白い炎』(ちくま文庫)
・ドストエフスキイ 『前期・後期短篇集』(福武文庫)『妻への手紙(上・下)』(岩波文庫)
・チェーホフ 『チェーホフの手帖』(新潮文庫)
・井筒俊彦 『ロシア的人間』(中公文庫)

など

2.クラシック音楽の森

・五味康祐 『音楽巡礼』『オーディオ遍歴』(新潮文庫)『人間の死にざま』(新潮社)
・宇野功芳のフルトヴェングラー・ワルター名盤(講談社+α文庫)
・梅津時比古 『日差しのなかのバッハ』ほか
・吉田秀和

などのほか、CDも出品予定

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2008年10月 6日 (月)

『露の身ながら 往復書簡 いのちへの対話』 多田富雄・柳澤桂子

本書を読むと、人間に生まれたこと、人間であることの価値を感じることができる。病んでいる人も、健康な人も、一読することで、心の奥のほうに小さな灯がともるかもしれない。そう思うような書簡集である。

表題は、多田富雄が書簡の中で紹介している一茶の句「露の世は 露の世ながら さりながら」を踏まえている。

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2008年10月 5日 (日)

「秋も一箱古本市」出品本紹介(1)

きょうは、出品本の一端を写真でご紹介いたしまーす。こちらです。

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一日中家にこもって、番頭・店主共同で出品リスト作成。エクセルで作る一覧表の項目は「出版社」「著者名」「著者名ふりがな」「書籍名」「売価」。文庫本、新書、単行本その他とシートを分けて作成。こんなに持って行けるわけがないのでは? という感じの選書でありましたが、少しずつ吟味して、これはやめよう、これはやっぱり出そう、てな作業や、これはちょっと安すぎた。これは売れ残っても嬉しくないから安めに値付けしよう、などという作業も。

おおまかなリストが出来上がったところで、それぞれの本に挟むスリップ作成も開始。まだ金額が最終決定していないので、スリップデータ入力まではいかないけれど、どれぐらいのサイズにするか、印刷しては切り抜き、本に挟んでみて、なんてこともやってみました。ひな形は完成。あとは、出品物が確定してから作ればよし。

会場で使う段ボールも決定。単行本と文庫本を見やすいように並べるにはどうしたらいいかと、展示のシミュレーションも少々。欲張った出品なのでなかなか大変。

選書は番頭に任せてあるので、私は当日の持ち物などをリストアップ。釣り銭とか、ホカロンとか、段ボールの下に敷く布とか、電卓とか、いろいろあります。

今回初めての出店なので、お店のロゴなんてもちろんありません。看板はどうしようかなぁ。こんなとき、イラストや飾り文字が上手に画ける人が本当にうらやましいところです。

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『ギリギリデイズ』 『同姓同名小説』 松尾スズキ

『ギリギリデイズ』は、1999年6月から2001年1月までの松尾スズキのHP上に掲載された日記を単行本化したもの。いまは、文春文庫に入っています。『同姓同名小説』は、小説とはいうものの、芸能人をパロディ化したショートショート的な作品集。

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『役にたたない日々』 佐野洋子

エッセイ。売れています。どこの書店でも、目立つところに平積み。「小説トリッパー」2003年冬季号から2008年春季号まで(途中三回お休み)の連載を改稿して単行本にしたものだそうです。

乳がんにかかって手術して、翌日からタバコを吸いに家に帰るような洋子さん。その後、抗ガン剤で一年間、生きているとは思えないほどきつい一年だったので、寝たきりで、同じ方向を向いて韓流ドラマを見続けていたら、あごが外れたりしました。そして、骨に再発したことを知って、担当医にあと何年もつか聞いたら、ホスピスを入れて二年と言われます。死ぬまで幾らかかるか聞いたところ1000万と答えた担当医に、洋子さんは言いました。「抗ガン剤はやめて下さい。延命もやめて下さい。なるべく普通の生活が出来るようにして下さい」

それから一年はたった、と記されています。

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「秋も一箱古本市」に出店します。そして今日は下見に。

「秋の一箱古本市」に出店することにしました。エントリーも完了し、店主マニュアルも送っていただきました。初めての参加ですが、スタッフの皆様、出店される方々、どうぞよろしくお願いいたします。屋号は「とみきち屋」、出店場所は「宗善寺」さんです。

実は私、古本のことも、我が家にある蔵書の中身も全然わかっておりませんで、もっぱら番頭である夫がそっち専門です。私は、名義貸し(笑)と広報担当。二人三脚で楽しませていただくつもりです。

とみきち屋の番頭から皆様へのメッセージは以下のとおりです。

思想、評論、音楽(クラシック)、小説等の絶版、品切れ本。特別な書店あるいはネットでないと入手しにくい本。読んでみて損はしない、知る人ぞ知る、これを読んでいればちょっぴり自慢できる、話題を提供できそうな本を揃えてみました。手に取った方の心が少しでも潤っていただければという気持ちで参加させていただきたいと思います。素人の出品ですが、思わぬ掘り出し物があるかもしれません。是非覗いてみてください。

ただいま、箱のサイズを勘案しつつ、選書中の様子です。情報をどこまで事前に開示してよいかわかりませんので、担当の青秋部の方に問い合わせ中です。そのお返事を待ってから、選書の内容を少しご紹介できるかもしれません。

本日、番頭と店主である私は、店を開かせていただく大家さん、宗善寺さんの下見も兼ねて、谷根千をぶらぶらとしてまいりました。お天気が気になるところですが、あ~、ここで皆さんと一緒に、思いの詰まった一箱を開陳するのね、とお寺の境内にちょっとだけ足を踏み入れて思ったのでありました。

その後、往来堂書店さんに立ち寄りました。一見するとごく普通の書店に見えて、どうしてどうして、その棚に並べられている本の選び方には、うーーむ、とうならせられるものがありました。番頭は、なかなか見つからずにいた『恋愛のディスクール・断章』(ロラン・バルト著/みすず書房)を発見して、大喜びで購入しておりました。

その後、軽く腹ごしらえをして電車に乗って移動。某古書店にて番頭活動開始。本日の購入本のうち私に報告のあったものは

  • 『ドストエフスキー』 E.H.カー著 筑摩叢書106 昭和46年初版第6刷
  • 『雪にとぶ鳥』 中河与一著 読売新聞社 昭和53年第1刷

でありました。そのほか、何を買ったのかは不明。当日のお天気が良くなりますよう願っています。

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