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2011年5月15日 (日)

とみきち屋の第10回みちくさ市 2011.5.8(番外編)

晴天に恵まれました、第10回みちくさ市。プレ開催を含め、7回目くらいの出店になるでしょうか。お約束どおりセンスゼロ、段ボール、せんべい缶、やる気のないPOP、100円ショップのかごといった店構えです。いつもの大家さんのガレージをお借りして、店を出させていただきました。

いつもお越しいただくお客様、出店者の方々とのやりとりや、とみきち屋から巣立っていった本たちのことは、番頭・風太郎からご報告申し上げるといたしまして(一箱古本市の後になりますから、たぶん秋風が吹く頃になるでしょうか・笑)、私からは、お約束どおり、番外編として、2つのご報告をば申し上げることにいたします。

題して、1.「南陀楼綾繁氏、驚きの暴言!!」事件、2.「はにかみ元高校生君とお話ししちゃった!!」事件、です。

さて、まいりましょう。

1.南陀楼綾繁氏、驚きの暴言!!」事件

南陀楼綾繁さんをもしご存じでなければ、古本市の世界ではちょっとモグリと思われちゃうかもしれません。『古本市のあるき方』の著者で、一箱古本市の創始者ですよ。そして、素人の古本好きな人たちをストリートに引っ張り出した張本人です。あ、そういえば、古書ほうろうのミカコさんの製作による「ミスター一箱古本市」の黄色のたすきは最近どうなったのでしょうか。

ま、それはおいておいて……。

不忍ブックストリートの最終イベントが午後にあるので、11時にはみちくさ市に行きますという予告があったので、今か今かとお待ちしていたところ、じゃじゃーん、御大登場! でも、我が店の前はするするするーと素通り。いつものこと、なり。本部に挨拶に行かれたのでありましょうね。

その後、戻ってこられたタイミングで、ちょっと離れたところにいた番頭も、つん堂さん(うちの番頭を心のお父さんと呼ぶ、超珍しい(笑)方です)も一緒になって、我が店の前の酸素が一気に薄くなる感じ。

そこで、あの一言が発せられたのでした。

「ああ、ちょうど守銭奴たちが揃っているじゃないか。そこに3人並んで。記念撮影するから」と。

守銭奴 しゅせんど SHUSENDO。。。

生まれてこのかたずっと貧乏暮らしをしておりますから、お金というのはないよりはあったほうがいいよね、と思わないこともありませんが、自分とは全く無縁の単語であると思い続けて約50年。驚きました。人生、長く生きてみるものです。

一箱古本市で、とみきち屋が、初日の売上金額1位、つん堂さんが2日目に1位だったことをたたえてくださったのでありましょうねえ。わかっていますって。「おめでとう。よかったね」と言いたい気持ちは山々だけど、ついついストレートを投げず、カーブやシュートを投げてしまうタイプなんですねえ。

お客さんとしての南陀楼さんは、とみきち屋をスルーして、ほとんど買ってくれません(買ってくれたのはたったの1回だけ)。そのことを飲み会などでねちねち言うと(笑)、「なんでこの二人は揃って僕をそんなにいじめるんだよ~」なんて言うんですよ。そりゃ、南陀楼さんが好きだからに決まってるじゃないですかねえ。わかんない人だなあ。これからも言い寄りますからね~。

というわけで、南陀楼さんとわれわれとみきち屋とは、これからもきっと屈折した愛情で結びつき続けることでありましょう。

さて、お待たせいたしました。次の事件の主人公ははにかみ君。

2.「はにかみ元高校生君とお話ししちゃった!!」事件

みちくさ市出店はたぶん7回くらいだと思いますが、毎回お買い上げいただいている常連のお客様が、とみきち屋にはありがたいことにあるんですね。その中の一人が、この「はにかみ元高校生」君です!!

あたりの喧噪をよそに、しずしずと近づいてくるたたずまいからして違います。歩き方は変わりませんが、当初より身長が伸びましたね。いでたちは、いつもよりもややアメリカンカジュアルな感じでした。

当店からお買い上げいただく選書のしぶさから、おおっ、と前のめりに、怒濤のおしゃべりをしてしまいそうになるのを毎回こらえておりましたが、今回はなんだか禁忌が解けたのか、ずいぶんおしゃべりしてしまいました。

ご来店時、番頭は少し店を離れており、他のお客さまもほとんどいなかったのでした。まずは本を目当てに来ていただいているので、買っていただくまでは話しかけず。

代金のやりとりをする段になって、親戚のおばさんと化したわたくし、ついに話しかけてしまいました!! まずは、最近の近況について質問。(プライベートなことなので省略)

それから、Pippoさんのポエトリーカフェに時々参加していることを知っていたので、それについて質問。一問一答なれど、迷わず正直に応答してもらえるので、無理矢理に会話を強いている気分にならずに済む。

そのうち番頭が店に戻り、「はにかみ君にまたお買い上げいただきました」と報告。番頭も「ありがとうございます」とお礼を言ったのち、やはり近況について質問。ポエトリーカフェについて、あるいは、そういった集まりに参加する意義について、将来の方向性などについて、もう少し話したあと、彼は去っていきました。

驚いたのはそこからです。(えっ、これで終わりだと思いましたか? どうして、どうして)

だいぶ時間が経ってから、はにかみ君がまた店に寄ってくれました。また番頭不在のとき。ふと顔を上げると、彼が立っているので、「あれ、お帰りなさい。いい本が買えましたか?」と、何度か寄ってくれるお客さまによく言う台詞を向けたところ、こくりとうなずいて、肩からかけたバッグから本の束を取り出して見せてくれました。

ピカピカと光る真新しい岩波文庫、赤い帯の束。

うちではたいがい、古ぼけた文庫(つまり手に入りにくい昔の作品)、しかも日本の作家のものが多い。また、ポエトリーカフェへの参加の様子も含め、好きな作家、作品はこのあたりかな、というふうに思っていたことがありました。

だから、ピカピカの本、赤帯は意外です。ところがあたくし、あいにく老眼なので(笑)、箱を挟んで離れているし、しかも若干逆光なのでよく見えません。「へえ、なーに?」と見せてもらったら、へえええ、こんな作品も読むのかー、と驚いたのでした。

で、「守備範囲が広いですね~。○○○の小説が好きなの?」と聞いたら、「いいえ」との答え。それじゃ、どうして? 好奇心がかき立てられますよねえ。その理由も彼は教えてくれました。いわく、荒川洋治さんの講座に参加したときに、荒川さんがこの作家を勧めていたのだそうです。もう1つの作品はすでに読んだのだけれど、これは読んでいなかったので、と。確かに5冊セットの大作ですものねえ。

講座への参加といい、荒川さんが勧めた本は、自分の守備範囲外であっても積極的に読んでみようという姿勢といい、自分から声を発することのないふだんの姿とは裏腹に、とても積極的に行動していることに、拍手を送りたいです。

「それなら、感想を書いて送ったら、荒川さん、喜ぶんじゃないかしら」。

こういうのが余計な一言なんですねえ、私の場合。

で、どのお店でいくらで買ったのかも教えてくれました。値引きはなかったみたいだけど、とても満足げでした。ここに作家名、作品名、買ったお店、値段も書こうかどうしようか迷ったけど、本人の許可がないのでとりあえず伏せますね。(もったいぶってるだけかも? 笑)

で、話はまだ続きますよ。

またポエトリーカフェの話になり、Pippoさんのお店で、次回取り上げられる村野四郎の作品も買ったのだそうです。

はにかみ君はまだまだゆったりした雰囲気。それで私が、「もうだいぶ売れて雑本しか残ってないけど、安くなっているこういうときに、普段読まないようなものを買ってみる、というのもいいかもしれないから、ゆっくり見ていってね」と言うと、素直にうなずいてしゃがみこんで箱をまたのぞき始めました。

「何かありそう?」と聞きながら、「ところで佐野洋子って読んだことある?」と聞くと、『友だちは無駄である』は読みました、と即答。あと、『神も仏もありませぬ』も持っているのだと言う。すばらしい。わが店の箱をのぞいたら、まだ何冊か佐野洋子本が残っている。そこで、インチキ売り子にしては珍しく、『シズコさん』を推薦。

ここからがおばさんトークなんだけど……。

私も若い頃は、文芸小説ばかり読んでいて、エッセイなどは全く読まなかった。しかし、年をとるにつれ、エッセイを好むようになってきた。特に佐野洋子さんは、そこまで書かなくてもいいと思うほどに自分をさらけ出し、生きるとはどういうことなのか、その哀しみ、喜び、みっともなさ、すばらしさを、自分の言葉で飾らずに書いてくれている。そこには小説を読むことからは得られない、また別の人間の生き様があらわれている。

シズコさんというのは佐野洋子のおかあさんのこと。佐野洋子自身がどうしても好きになれなかった母親、シズコさんが認知症になってしまう。そのお世話をしているうちに初めておかあさんのことが好きになり、心が通い合う。そんなことが書いてあって、心を打つ。

こういうものは、本来は年をとってから読んだほうが味わい深く読めるのだろうけれど、詩も含め数多くの文芸作品に親しんでいるあなたなら、その年齢でも何か感じることがあるだろうと思うから、ぜひおすすめしたい。

まあ、なんてお節介なことでしょうねえ。

はにかみ君が私のその長広舌を黙って聞いてくれている横で、ちいちゃな初老のおばちゃまが、「これ、ください」。手に持っていたのがなんと佐野洋子。タイミング良過ぎます。おばあちゃんに「ありがとうございます」と本を渡したら、続いてはにかみ君が黙って『シズコさん』を差し出したのでした。

あら、買ってくれるんだ。ありがとう。というわけで、200円を100円におまけしました。

荒川さんが勧めた本、私が勧めた本。それぞれ全く違うものだけど、勧める人の気持ちを受け止めて、それじゃ読んでみようかな、とすぐにそのとおりに行動する。その素直さがいいな~と感じて嬉しくなりました。

しゃべるのは苦手なのかもしれないけれど、インプットしたものを何らかの形ではにかみ君の言葉でアウトプットしてほしいな、と思っています。

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こういう出会いを、古本市は私たちにプレゼントしてくれるんです。

素敵でしょう?

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