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2011年12月30日 (金)

『古本道入門  買うたのしみ、売るよろこび』 岡崎武志

岡崎武志さん(オカタケさん)は「つなぐ人」。私の中では、そういう存在だ。何をつなぐかというと、古本屋さんと、古本を探すのが好きな人と、古本を読むのが好きな人と、古本のことを語るのが好きな人と、古本を売るのが好きな人と、本が好きな人と、本を読むのが好きな人と、本にまつわるいろいろな人たちとをつないでくれるのです。しかつめらしいことを言わずに、ひょいっとつないでくれます。簡単なことではないと思いますが、オカタケさんの周囲には、気付けば、いろんな立場の人たちが、同じ場所、同じ高さに立っていることが多いのです。本の世界をフラットにするオカタケ・マジックです。

この本の帯にはこうあります。「敷居は低いが、奥は深い。『本好き以上、古書通未満』の方へ」と。

私は、とみきち屋として古本市に参加させてもらっています。でも、本当のところは、番頭の風太郎が参加したいと言って始まった話でありまして、私自身は古本屋さんというところに足を踏み入れたことはほとんどありません。こういう人間にとって、古本屋さんはものすごく敷居が高いところです。

これは古本に限りません。「マニア」の世界は閉じています。マニアにしかわからない価値観、用語、ニュースを知っている、語れる、ということが価値になり、それ以外の人たちは排除されます。それがマニアの世界、オタクの世界です。古本を知らない人間にとっては、古本好きの人たちにはそういう匂いがちょっとします。

でも、大丈夫なんです、オカタケさんがいれば。

オカタケさんは、雑貨と一緒に絵本を売っている人も古本屋さんと認めてくれます。女子の古本屋さんは特に大歓迎されます。正統派古本屋以外の古本関係の人に「亜流」の烙印を押したりしません。古本屋さんに入ったことのない人にも、楽しみ方を教えてくれます。「こんなことも知らないのか」といった視線を高みから投げるようなことは全くありません。本が好きな人、本に興味のある人、古本に興味のある人は、プロであろうと、アマチュアであろうと、どんな人でも仲間に入れてもらえそう。

ご著書のタイトルには「道」とか「道場」とかついていますけれど、その気がある人ならば誰でも、ウェルカム・トゥー・古本ワールド!! オカタケさんを取り囲む世界は、広く平等にあたたかくひらかれています。

この新書を読めばわかります。オカタケさんは、レアな古本を収集することが好きなのではなくて、本が好きなのです。本と出会うこと、本を知ることが好きなのです。古本屋さんに行けば、手に入れにくい本と、あるいは、見たこともなければ存在すら知らなかった本と出会うことができる。その喜びを求めて、日々、古本屋さんを回るのです。

「この本が欲しい」という明確な目的を持って古本屋さんに行くこともあるでしょうけれど、「うわー、こんな本見つけちゃったよ」という偶然の出会いに、断然、より大きな喜びを感じている様子です。少年時代の小冒険、あるいは宝探しと似た喜びなのかもしれませんね。

でも、オカタケさんは真面目にこんなことも書いています。

古本とつきあうことは、自分がいかにいろんなことを知らないか、ということを「知る」行為でもある。知って初めて、そのことを知らなかった自分に気付く、と言ってもいい。私など、日々その繰り返しだ。新しい「知見」を連れて、古本屋へ行けば、昨日よりいっそう本棚がよく見えて、買うのが楽しくなってくる。

「目に見えないもの」「数字では測れないもの」「到達点のないもの」を求めるのは青年の特権。なるほど、オカタケさんは青年の心を持ち続けているのですね。

そんなオカタケさんに「神保町へ行かずして、古本について語るなかれ。」と言われれば、「はい、おっしゃるとおり」と素直にうなずく私です。だから私は、本書を紹介するふりをして、古本についてじゃなくてオカタケさんについて書いてます。

どんなに調子が悪くても、どんなに疲れていても、古本屋さんに行けば1時間でも立ちっぱなしで棚を見て、重たい荷物を持って帰ることをいとわない人が、我が家にも一人。その人と一緒に時間を忘れて古本屋巡りをするような人間になりたいとは、やはり思えないわけですね。

そうはいっても、あとがきでオカタケさんにこう言われると、心が動きます。

私は「古本の森」のことも知る番人として、入口でとまどう初心者の人たちに、森のなかを覗いてもらおうと、この入門書を書いた。古本は知れば知るほど、おもしろさが増幅され、より深くなっていく。「読書」の幅を広げるツールでもある。本好きなら、そのことですでに、この世界へのパスポートは与えられているといっていい。長い人生、古本の魅力を知らずに済ませるのはもったいない。時代の刻印がある、さなざまな所有者がバトンのように受け継いできた古本を、どうぞ、手に触れてみてほしい。

「こっちの世界は楽しいよ~。よってらっしゃい、見てらっしゃい」。そんなふうに呼びかけてくれる1冊です。オカタケさん、入り口にも立っていない初心者未満の私ですが、読んでいるだけで楽しかったです!!

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