« 【Exhibition “From Hand to Hand”message of 11.3.2011】 のお知らせ | トップページ | 「本の島」をめぐる対話vol.3 堀江敏幸vs吉増剛造(2)@青山ブックセンター本店(2012.5.26) »

2012年5月30日 (水)

「本の島」をめぐる対話vol.3 堀江敏幸vs吉増剛造(1)@青山ブックセンター本店(2012.5.26)

2012年5月26日(土) 青山ブックセンター本店にて、「本の島」をめぐる対話vol.3 堀江敏幸vs吉増剛造 が開催された。それはそれは楽しく豊かなトークで、会場全体がしあわせに包まれていた。全貌を記録するのはとてもとても不可能なれど、余りにも素敵な時間であったので、その場で取ったメモを頼りに、少しずつそのときの記録を書いてみたい。しかし、会場が暗く、手元が全く見えないので、自分の書いている文字が見えないなか、のたうつ暗号のような文字は解読不能なものも多い。どこまでできるだろうか。

何回かに分けて書いていく予定。今回は、お二人の印象と、お二人の関係について。

◆堀江敏幸さん◆

いでたちは、雑誌、テレビ等で拝見するいつもの感じ。ご本人の印象同様、威圧感というものを一切感じさせない、ひょうひょうとした、風の通り抜けるような雰囲気。色も、においも、体温も、体格も、過剰なものが一つもない。脂ぎったところもない。想像していたよりも、上背がおありで、また、細身でした。

印象的だったのはヘアスタイル。前髪をめがねの縁にかかるほどたらしていて、ちょうど中学生になりたての少年が少しずつ髪を伸ばし始めたときのような感じ。話をするときには、話し手の顔をしっかりと見ているにもかかわらず、人と目を合わせるとはにかんで目をそらしているのではないか、という印象を与えるような雰囲気は、あの前髪とめがねのせいだろうか。

◆吉増剛造さん◆

開場になってまもなく壇上に来られて、しつらえられた小さな舞台のご自身の席に腰掛けて、用意された小机に、トークで言及しようということなのだろう、何冊もの書籍をbookendを使って並べ、時折その順番を入れ替えたりしながらも、開場をねめ回し、知った顔があると、片手を上げたり、人なつこそうな笑顔を見せて、既に会場と一体化せんとするばかり。いでたちは、音楽家とも見えるようなスタイリッシュな感じ。黒の上下に(スーツではない)、ストールを巻いて、白髪交じりの天然パーマのヘアスタイルと、しわの刻まれた日本人離れした風貌とが、国籍、性別、年齢を越えた世界人のイメージ。男性ではあるけれど、魔女会の参加資格も十分にありそうな感じ。70代でこの色気はすごい。

◆「本の島」とは◆

「本の島」vol.1から「ほんの島ブックフェア案内」より

「本の島」とは、一昨年亡くなった名編集者、津田新吾が構想したあたらしい出版のかたちです。
彼が編集し残していった本に流れるビジョンを、書き手、作り手、売り手、読み手が、
それぞれの場所で受けとめ、創造的に引きついでゆくこと。
そして、彼の本をとおした深い精神的なつながりをもとに、
それぞれの群島をかたちづくってゆくこと。
そんな活動がはじまりました。
このたびのブックフェアはそのひとつです。
こうした活動に共感する方々から
10冊ずつ本をお選びいただきました。
この10冊の本をひとつの島に見たて、
その本の島々が寄りあつまることによって、
書店のなかに群島を生みだしました。
この棚から吹く、豊かな本の島風を、
ぜひ感じ、読んでみてください。

後藤亨真

◆堀江さんと吉増さんの関係◆

吉増さんに促され、堀江さんが口火を切りました。「よく誤解されているのですが、吉増さんと私とがこういう公の場で一緒にお話をするのは今日が初めてです。節目節目でお会いしてはいるのですが、これまではどちらかというと著作を通しての関係であったと言ってもいと思います」。そして、それぞれの節目について語り始めました。

初めて会ったのは、一昨年亡くなった津田氏の結婚式。1999年10月のこと。堀江氏はまだ初めての本に続いて、まさに津田氏からの依頼を受けて『おぱらばん』を上梓した頃のこと。既に重鎮であった吉増氏と同じテーブルにつくことになり、「こんなテーブルに座っていいのか?」と思うような立場にあった。

吉増さんは堀江さんに、「『おぱらばん』は大変いい作品ですね。売れる売れないにかかわらず、あれはとてもいい作品ですよ」と声をかけたのだという。全く何の反響も得られなかった作品について、初期の頃にそのように言ってもらえたことは大きな励みになった。後に『おぱらばん』を文庫に入れる話が来たとき、解説をお願いするのは吉増さん以外にはないと思ってお願いしたところ、快諾していただけた。吉増さんとはそういう出会いをしている。

次に会ったのは、津田氏の葬儀の際。堀江さんは「挨拶をしてもらいます」と言われていたこともあり、汗をかいてはいけないと思い、自宅からタクシーに乗ったところ、渋滞に巻き込まれて遅れてしまった。葬儀委員長の吉増氏に大変叱られた。堀江さんにはしっかりつたわっていなかったのだというが、実は弔辞のトップバッターが堀江さんの予定だったのだそうだ。堀江さんがあらわれないので、吉増氏は、式場の人に仕切られてしまってはいけないと思い、急遽即興で司会を務めて式を進行したのだそうである。吉増氏、「あなたはいつも遅れるんだよね」。さらに、最近のフランスでの偶然の再会の話も実に面白かった。

吉増さんは、堀江さんが話している最中は、実に楽しそうに聞いている。頭の中でさまざまなイメージが広がっているであろうと想像されるのは、磨き上げられた黒い革靴のつま先やかかとがリズムをとっているかのように、饒舌に動いているからだ。親しげな口調ながら、ずっと年若い堀江さんに向かって、まったく居丈高な態度を見せない。とにかく津田新吾について、それぞれの作品について、言葉について語るこの時間が楽しくてたまらない、といった風情。

一方、吉増さんが話すときは、堀江さんに話しているだけでなく、自分の頭の中と問答したり、宙を見つめて、「○○なんだなぁ~」「ああ、そうだ~、こういう感じもあったなぁ~」といった、自問自答のような調子もあいだに混じってくる。さらに、われわれギャラリーがいることを意識したうえで、「ねえ、今、いい話が聞けたね~」とか「まるで作品の中を歩いているみたいな感じになってきたね~」などとこちらに向かって話しかけてくるのだ。

吉増さんの話を聞いている堀江さんは、マイクを持ったまま、ロダンの「考える人」のような感じでじっと構えている。時々、あいづちを挟みながらも、吉増ワールドの展開を見守る感じである。

という感じで始まったトーク。自由自在に話はふくらみ、会場はその自由な展開に酔いしれました。忘れてはいけないので、これからどんな報告をしていくか、キーワードだけピックアップしてみます。

・『おぱらばん』執筆の経緯 「うわごと電話」
・吉増氏の津田氏評
・堀江さんの津田氏評
・『おぱらばん』と中国
・『ユリイカ』掲載裏話
・トーベ・ヤンソンと『おぱらばん』
・津田氏とジャンル
・吉増氏と吉本隆明
・文字について 万葉仮名 からだの動きと助詞の「の」
・吉増氏による自作解説
・心の入れ墨、言葉の入れ墨
・奄美と島尾ミホと津田新吾 映像へ
・卓球のときめき 卓球と対話
・『おぱらばん』後書き  「おそるおそる」

キーワードを書き出しながら、これを全部まとめるのは至難の業だという気がしてきた。すべてを書こうとしたら結局何も書けないかもしれない。したがって、堀江さんのファンとして、堀江作品を読み解くうえでヒントになるような話題に絞って、これからボツボツとアップしていければ、と思う。いつになるかわからないけれど……。

もちろんただいま『おぱらばん』(新潮文庫)再読中。

|

« 【Exhibition “From Hand to Hand”message of 11.3.2011】 のお知らせ | トップページ | 「本の島」をめぐる対話vol.3 堀江敏幸vs吉増剛造(2)@青山ブックセンター本店(2012.5.26) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21746/54832065

この記事へのトラックバック一覧です: 「本の島」をめぐる対話vol.3 堀江敏幸vs吉増剛造(1)@青山ブックセンター本店(2012.5.26):

« 【Exhibition “From Hand to Hand”message of 11.3.2011】 のお知らせ | トップページ | 「本の島」をめぐる対話vol.3 堀江敏幸vs吉増剛造(2)@青山ブックセンター本店(2012.5.26) »