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2012年6月 4日 (月)

「本の島」をめぐる対話vol.3 堀江敏幸vs吉増剛造(3)@青山ブックセンター本店(2012.5.26)

◆『おぱらばん』解説にまつわる対話◆

『ユリイカ』に連載された『おぱらばん』が青土社から単行本として出され(津田氏の本来の念願)、さらに新潮文庫に入ることになったときに、吉増剛造氏が解説を書かれています。その当のお2人が目の前で、「解説」について、そして「解説」が解説している『おぱらばん』について語ってくださるのですから、ファンとしてこんなに幸せなことはありません。

早く家に帰って「解説」および「作品」を読み返したいという思いと、一分でも長くこの対談を聞いていたいという思いとに引き裂かれながらお二人の話を聞きながら、自分でもわかるほど私はにこにこ、にやにやしているのでした。

☆「恐る恐る」の人

吉増さんはご自身で書かれた「解説」を読み上げます。

「……と作者がこの上もなく仔細に辿る小径は、わくわくするほどたのしいものなのだが、言葉にさわるときにはたらいているらしい柔らかな心の芯に、堀江敏幸氏の〝憶病な私、……〟 〝恐る恐る〟には、これまでに誰もそこまで逸れて行こうとしたことのないような、……音楽でいうと、モチーフというのか楽節、小節の、……それこそ恐る恐るの手筋(「手スジ」だなんて、羽生さんみたい!)があるのであって、その途上で、わたくしたちも仏和辞典を繙きながら、撚糸のちいさな瘤と小さな、指がつくる小島と出逢うのである。憶病に、恐る恐る、隠されている世界の情景にさわって行く、読む目も、それにより添って、……この奥深さと仔細こそが、おそらく来るべき文学の姿なのだとわたくしは思う。」

この紹介を受けて堀江さん、「僕が〝恐る恐る〟の人間であることは、津田さんにはだんだんと理解してもらえたようです」。津田氏と堀江さんが最初は喧嘩ばかりだったというのは、津田氏の単刀直入、強引なスタンスは、〝恐る恐る〟の堀江さんにはそれだけで拒否してしまうタイプの近づき方だったようなのです。「僕は、バッとやってきて、パッとつかんでいくようなあり方に対してはまず反発するんです」。

堀江さんの説明によれば、〝恐る恐る〟といっても、特に暗いとか卑屈だとかそういうイメージではないというのです。楽しい〝恐る恐る〟も含めていろいろな〝恐る恐る〟があるとのことです。それを聞いて私の脳裏にとっさに浮かんだ〝恐る恐る〟は……、〝そろそろと様子を見ながら〟〝反応を確かめながら〟〝その過程を楽しみながら〟などでした。

津田さんはそういう堀江さんに向かって、「大丈夫。自分の言うとおりにやればうまくいく。〝恐る恐る〟じゃなくて〝恐る〟でいいじゃないか」と最初のうちは主張するものですから、それに対して堀江さんはかたくなに「いや、僕は〝恐る恐る〟でなければダメなんです」と言い張っていた、というのです。

「僕が〝恐る恐る〟の人間であること」というフレーズは、耳に残った表現の一つです。さすが詩人の吉増さん、言葉の選び方や、漢字か仮名書きかといった視覚的な文字、そして言葉に対する距離の取り方についてのアンテナの精度がすばらしい。柔らかく、かつ、繊細に言葉を受け止める力が備わっているからでしょう、話を自然に引き出す名人でもありました。

◇「小島」

対話では特に言及されませんでしたが、今、この記事を書いていて気づきました。吉増さんの解説の中にあるフレーズ「わたくしたちも仏和辞典を繙きながら、撚糸のちいさな瘤と小さな、指がつくる小島と出逢うのである。」

「小島」!

わたくしたちも……小島と出逢うのである。

「本の島」刊行記念を巡る対話の中に、編集者津田氏の着想から生まれた作品の解説の中の「小島」。しかも、その解説を書いた人が偶然にもその部分を読み上げる。何から何までつながっているのだなぁ、と、たったいま思ったのでした。

□■□ 次回は、「卓球と対話」について書きたいと思います。

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