著者(た行)田口ランディ

2005年7月25日 (月)

『ドリームタイム』 田口ランディ

ドリームタイム
田口 ランディ / 田口 ランディ著
文芸春秋 (2005.2)
通常2??3日以内に発送します。

エッセイと小説の中間の短編集。『富士山』に続けて読んで得た確信は、ランディは自らの経験に基づく話を書くほうがうまい、ということ。裏を返せば、ストーリーづくり、ディテール書き込み、描写力、虚構世界の構築、こうしたものは苦手、ということなのかもしれない。

初めて小説に挑戦した『コンセント』が出たとき、いいぞ!と思ったのだが、あれは実体験をもとに、ランディがどうしても書かなければならないテーマだったからだ。書かねばならない必然は、作家自身にあったのだ。

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『富士山』 田口ランディ

富士山
富士山
posted with 簡単リンクくん at 2005. 7.25
田口 ランディ / 田口 ランディ著
文芸春秋 (2004.3)
通常2??3日以内に発送します。

富士山をテーマに据えた小説が4編。主人公は皆、生きることの意味がわからず、「死」が常にそばをちらついている人たちだ。そして、「存在」の意義が実感できない彼らを、富士山がいつも見つめている、といった構成。

『青い峰』

医学部に入って、死体を見てから、生きることの意味、人の命を救うことの意味を考えるようになり、カルト的宗教集団に入信。集団が解散させられてから、社会復帰してコンビニ勤めを開始、人とのかかわりをなるべく浅くしようとしている主人公。彼に近づくのは、やはり人との深いかかわりが怖いという自称女子大生のバイトの女の子こずえ。こずえとのやりとりから、彼の心に変化が生まれる。こずえの言葉で表現される富士山は、「いつも、静かに、黙って、見守ってくれている存在。同じ世界にいるのに、別の世界のものみたいな、そんな存在」。

『樹海』。自殺名所の青木ヶ原樹海に、中学校卒業記念の冒険をしに、15歳の少年たち3人が出かける。それぞれが抱える心の闇と、自殺未遂の男性との遭遇。魂の世界にひかれるティーンエイジャーの気持ちと、現実の世界に引き戻してくれる富士山の姿と。

『ジャミラ』は、なかなか味のある一編だった。ごみを溜めて、溜めて、溜め込んだごみ屋敷に住む老婆に、市役所環境課の職員、僕は「ジャミラ」とあだ名をつける。僕の仕事は、ジャミラにごみ撤去を承諾させること。ジャミラが溜め込むゴミの意味。そして、僕が、切り捨てるために、忘れるために、記憶の穴に埋めてきた過去のゴミ。ジャミラは、富士山からやってきた異界の生き物だったのかもしれない。

『ひかりの子』。産婦人科の看護師である私は、中絶に来る女の子に対して憎しみを感じてしまう自分が苦しい。ふと出会った女性に誘われて、富士山のグループ登山ツアーに参加する。さまざまな苦難があった末、ご来光を拝むシーンがハイライト。「あたり一面に光が溢れ、雲が血の色に染まる。このようにして、魂は毎日生まれていたのだ。そのことを忘れているけれど、でも、すべての人が知っている。私たちはみんな太陽の子供だ。新しい朝だ。全世界に、無数の産声がこだまする。」

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