著者(あ行)小川洋子

2013年2月 9日 (土)

『ことり』 小川洋子

良質な小説の絶対に外せない条件として、読者が自分を重ね合わせ、独自の読み方ができること、私はそれを挙げたい。世の中に出た時点で、作品は読者のものになる。これが正しいといった読み方はない。読者がそれぞれに「この小説はこういう意味だ」「この主人公はこういう人だ」と手前勝手に受け止める。現代は「個人がメディアを持つ時代」だから、それぞれの受け止めをこれまた手前勝手に発信する。「このように読んでほしい」と思って書いている作家がいるとしたら受難の時代かもしれない。しかし、マスメディアの力は、こと文化の分野に限っては、本当に本当に地に落ちた感がある。個人の発信、個人的な趣味、好き嫌いを、何の利害関係もなく発信する個人が増えてくると、プロの発信も、個人の発信も、マスメディアによる発信も、ある意味同レベルに並んでしまう。

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2007年6月25日 (月)

『海』 小川洋子

粒の揃った短編集です。小川洋子は短編が巧いです、本当に。雰囲気だけを描いてわかってもらおうとしていません。しっかりとした情景描写に裏打ちされているので、短い文章でもくっきりと映像が目に浮かびます。そして、そこにはお話がきちんとあるのです。

口の聴けない少女も出てくるし、コミュニケーションが成立しない老人も出てきます。生い立ちが恵まれていないティーンエイジャーが出てきます。何かの障害を抱えた人も出てきます。でも、小川洋子の作品の登場人物たちは、自分が置かれた境遇に疑問や不満を感じません。与えられた状況に、何の偏見も先入観ももたずに、自分の持てる力を最大限動員して対処しようとします。その自然さ、素直さ、しなやかさに、心が洗われる気持ちがするのです。

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2007年6月16日 (土)

『偶然の祝福』 小川洋子

現在、最も文学的な小説を書ける作家、なのではないか、と私は思っている。「文学的」という言葉の定義を学術的にできるわけはないのだけれど。ひさしぶりに読むと、文学の世界に遊ばせてもらった満足感が得られるのだ。今のようにメジャーになるずーっと前、デビュー作品の頃から読んでいた。周囲に勧めても、万人受けする作品でなかったこと、私自身が若かったので、勧める相手も必然的に若かったこともあり、作品全体に漂う病的な感じがあまり好まれなかったのかもしれない。バブルの時代で、この内省的で硬質な筆致、そして死や喪失の匂いに包まれた作品は、時代に合っていなかったということも言えるだろう。

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2004年9月23日 (木)

『ブラフマンの埋葬』 小川洋子

ブラフマンの埋葬
小川洋子著

出版社 講談社
発売日 2004.04
価格  ¥ 1,365(¥ 1,300)
ISBN  4062123428

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一見、軽いおとぎ話のようだ。しかし、そこは小川洋子の世界である。タイトルによる暗示が、小説全体を支配している。いつものように、日常からかけ離れ、時がとまった、死と隣り合わせの世界。大事件は起こらず、声高に主張する人もおらず、しんとした、生と死のみに支配される現実。そんな中、僕の一人称で描かれるのは、ブラフマンがやってきて、ブラフマンと別れるまでの短い時間。

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