『未見坂』 堀江敏幸
短篇集。大変にすばらしかった。誰かが欠けた家族の中で育つ子どもが、大人の事情を感じ取りながら、与えられた小さな世界の中で、未知の世界、初めて出会うタイプの人、生まれ育った家にはない価値観、などに出会う時間を、丁寧に描いている。物語の舞台の設定が周到で、登場人物の書き分けが見事。短編は、その物語の設定を読者に納得させられるかどうかが勝負。その場面の匂いや音、時代や気分が、各短編の冒頭から、映画のように広がる。その世界に長くとどまっていたいと思うことから、堀江作品の長編は好きだけれど、完成度という点では、短編がまさるかもしれない。『バン・マリーへの手紙』よりも、文芸的な作品が並んだ。『雪沼とその周辺』の後続作品との位置づけらしいけれど、私は、本書のほうが断然良い、と思った。
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女性との偶然の出会いをテーマにした、連作短編集。この作者の作品にしては珍しく、官能の匂いもほのかに感じられる。私の一番のお気に入りは「アメリカの晩餐」、そして次は「さくらんぼのある家」。
しみじみと余韻が残る、是非とも一読をお勧めしたい短編集。

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