音楽

2005年2月14日 (月)

フォーレの『レクイエム』 ミシェル・コルボ/ローザンヌ声楽・器楽アンサンブル

コルボの『レクイエム』。ついに生演奏を聴きました。東京オペラシティコンサートホール。

本日のプログラムは
    ヴィヴァルディの「グローリア」
    ヘンデルの「ディクシット・ドミヌス(詩編110)
    フォーレの「レクイエム」

全体を通して、精神性の高い、美しい演奏であった。聴く者の雑念を一瞬で取り除く音の力。小編成のアンサンブルの生み出す、確かで、迷いのない、コルボがつくり上げてきた音は、予想をはるかに超えて特別な音だった。合唱も、器楽も、ディミニエンド、弱音の美しさが絶品。そしてまた、雄々しく、歌い上げるまっすぐに力強い音が心を打つ。ソリストの声も、ビブラートのない、抑制の効いた骨のある歌い方が、宗教音楽にぴったりである。

1972年のベルン交響楽団との録音では、『レクイエム』をボーイソプラノに歌わせたコルボが(ローザンヌとの1992年の再録音では女声)、今回選んだソプラノ歌手は、ボーイソプラノの性質に近い声を持つ女性歌手だった。

コルボの演奏の特徴はいろいろあるが、今日最も強く感じたことは、曲の中の区切りを非常に大切にすることによって、全体の構成がきちんと出来上がっていること。そのために、安心して演奏に身をゆだねて聴いていることができるのだ。それぞれの区切りの最後の音が、ふっと消える瞬間の見事さは魔法のよう。その切れ目でこちらも一瞬息をつくのだが、緊張がほぐれるどころか、次の区切りの一音を待って、さらに緊張が高まり、曲の終わりに向けて気持ちが高揚してゆく。特に「レクイエム」のSanctusの一音目が素晴らしかった。

アンサンブルは常に安定して全体を支え、曲全体をしっかりと構築していたが、特に素晴らしかったのは、オルガン。控えめながら演奏をやさしく、そして大きく包み込んでいた。

最終章の「イン・パラディスム」は、まさに天国の音。美しく、気高く、天に向かってゆく音を聴いているようで、思わず目頭が熱くなる絶妙のハーモニー。人の声と楽器がここまで一つになった演奏を、私は知らない。

2003年に首の腫瘍の手術をしたコルボは、本日が71歳の誕生日。演奏後、何度となく繰り返されるカーテンコールの中、花束がコルボに渡されると、楽団が「ハッピーバースデー」と演奏。あたたかい雰囲気に包まれた、音楽を心から愛する人たちの集まる夕べであった。


1972年のボーイソプラノを起用したベルン交響楽団との演奏は、エラート(国内盤)からCDが発売されており、1992年のローザンヌとの演奏のCDは、モーツァルトの『レクイエム』とカップリングされ、ヴァージン・クラシックス(輸入盤)から発売されています。是非お聴きください!

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