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2012年10月 5日 (金曜日)

初めての言葉 【合議(あいぎ)】

【合議(あいぎ)】

これもまた、お役所言葉です。

官僚出身者あるいは関係者が「合議(あいぎ)」という言葉を時々使われるので、霞が関では「合議(ごうぎ)」とは違う意味合いで使っているのだろうと思っていました。そしてニュアンスはわかるのですが、正確な意味がわからずにいました。

いろいろ調べていたら、東京都国分寺市の例規情報検索のための利用方法を書いたページを発見(こちら)。そこに用語の説明がありました。これによると、正式な使い分けがあったのですね。長年気になっていたことがすっきりしました。

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●「起案」とは,行政の目的を達成するうえで必要となる意思決定の内容を確定し,文書の形式にまとめる事務,つまり決定案の作成をいいます。

●「決裁」とは,権限を持った者が起案文書の内容を意思として確定することです。

●「合議」とは,起案文書の内容の決裁責任者以外の者で,その内容について何らかの関係を有し,その決裁の内容に意見を表明すべき職位にある者に同意を求めることです。

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ここでの「合議」は、「ごうぎ」ではなく「あいぎ」です。合議(ごうぎ)とは相談することですが、ここにある「合議」が、複数人数の人が同時に行なう行為(相談)を示していないことは明らかだからです。

決裁責任者ではないが、関係があって、意見表明すべき立場にいる人の同意、という意味なんですね。このあたりに「ご説明」「根回し」といった匂いが漂ってきます。なるほど~。

時々「合議も取らずに強引に上に話を通した」といった表現を耳にするのですが、なぜそんなことができるのかなと思っていたのです。それは「決裁権者」の押印ではないからなんですね~。もちろん書類は下から(関係部署の担当者も含め)順番に上げていくことが基本ですが、根回し不足だったりすると途中でネグられたり店ざらしにされたりする可能性があります。それを避けるために飛ばしてしまうという選択をすることもあるのでしょう。その後、波風が立つことは承知のうえの乱暴な行為ですね。

書類の上のほうに印鑑用の四角が幾つもあって、そこに「決裁欄」「合議欄」などがあるのでしょうね。

某現役官僚インタビューのなかに「役人ははんこをもらうためなら何でもします」という表現がありました。もらうべきはんこをもらえなかったら、その人は役立たずとみなされるわけです。行政というのは、文書、人事、予算の世界です。人事も予算も最後には「押印」が必要ですし。

「合議(あいぎ)」「決裁」という言葉にもう少し敏感になって、今後のオーラル・ヒストリーやインタビューに臨んでみたいと思います。

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ここからは、2012年12月15日の追記です。

霞が関での「合議(あいぎ)」の実態について、インフォーマルに少々リサーチしてみましたところ、「合議」には印鑑なんかない、書面もない、という話が。昔はファクスベースでのやりとりだったけれど、今はメール。かつ、「稟議書」的なものではなく、内諾的な色彩が強い、ということ。

考えてみたら、複数省庁にまたがる案件というのはなかなか大きな問題です。そういう懸案が官僚の間から自主的に発生してくることはありませんから、当然政治から降りてきていることになります。そういう問題が省庁レベルで最終決裁になることはないわけです。

そうなると、「行政」の親分たる「内閣」が最終決定権者となり、すなわち「閣議決定」されることを目指して「合議」は繰り広げられるのである、と言えます。そうであれば確かに書類は残りませんね。

具体的な法律の起案となれば、それこそ各省庁がしのぎを削って文言争いをするわけですが、それは「ブツ」があるときの話。その前段階の「合議」でもめるケース、スムーズに進まないケースにどんな例があるかといえば、新規事業で複数省庁が関わることは確かだけれど、どこも自分が旗を振ってやりたいと思わないような事業(=自分の省庁の権限拡大につながらない)である場合に、積極的な推進力が働かないのだそうです。

逆に、どこか一つの省庁が総力を挙げて音頭を取り、他省庁のキーパーソンを説得し、あるいは協力を取り付けて進めることができれば(各省庁にもお土産がある事業であれば)、合議はスムーズに進む、ということでしょうか。

しかし、「我が省」がしっかりと取り組まねばならない根拠がどこかの紙に示されていれば、その案件に積極的な気持ちはなくとも、官僚の方々というのはしっかりと働くようです。自身の行動に根拠となる指示が明確にあれば、もしもその行動を後に批判されても理由を示すことができ、免責されるからです。逆に、根拠がないものについてはやはり後ろ向きになりがちである、ということが言えるわけです。

民主党政権の政治主導はことごとく失敗しましたが(個々には官僚組織をしっかりと使えた政治家もいたようですが)、その原因は、内閣が行政を執行する場合、手足となるべき官僚を「使う」ことなく「排除」してしまったからです。官僚組織をよく知り、個々の官僚にモチベーション高くしっかりと働いてもらえるような環境をつくらなければ、結局は何も動きません。とはいえ、初めて大臣、副大臣、政務官になった人たちにそんなことができるわけがなく、多くの苦い教訓が残ったことでしょう。官僚側はおそらく、政権交代を恐れる気持ちはもうなくなったことと思います。

有能な官僚の方々の力が、日本全体のために有効に使われるような仕組みと、その仕組みを作っていく政治の力が求められていると思います。

「合議」から脱線しました。この項目は、さらに追記するかもしれません。

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コメント

とみきちさん、こんばんは。

いつもフムフムと納得させられることが多く、楽しみに拝読しておりますが、初めてコメントさせていただきます。

私は某役所に27年半勤務しておりますが、起案文書で「合議」とされている言葉はこちらでは「協議」といっています。起案文書(原議といいます。)の協議の欄には決定後供覧も一緒になっており、事前回付が必要な時には決定後供覧を消し、決定後に一応知っておいてね、という場合には協議を消します。まあ実際に回付のその場であれやこれやと物言いが付くようでは事前調整が悪い、ということでしょうか。

ずっと役所にいると、本当にいろいろな部分で麻痺してしまうことがあるのかもしれません。…反省。
なんだかんだといいつつ相変わらずハンコ行政・文書主義であることは否定できませんね。

投稿: ロッキングチェア | 2012年10月 6日 (土曜日) 17:32

>ロッキングチェアさん

こんばんは♪ 
コメントをありがとうございます。

> 起案文書で「合議」とされている言葉はこちらでは「協議」といっています。

へえ、そうなんですか。
すべてのお役所に共通の言葉というわけではないのですね。
「協議」といっても、皆さんで集まって「どうしましょう」ということではないのですね?
そうだとすると、国分寺市のこの例は「ごうぎ」と読む可能性もありますねえ。

となると、「あいぎ」は霞が関ジャーゴンである可能性もあり?

ちょっと追跡調査してみます。
訂正があったら、この記事に加筆いたします。
生きた情報をありがとうございました!

ここからは雑談。

霞が関の省庁の権限争いは、最終的に予算の話に行き着きますから、手続きの問題、根回し、はんこがすべて、なのですよね。

官ですから、裁量が少なく権限や所掌範囲が決められているのは当然ですが、それが属人的な責任でなく、肩書き、地位が優先であり、かつ、そのポジションの人は2年に1回くるくる替わる、というのが、一般人から見るとどうにもやりきれない感じがしてしまうところです。どうやって責任を取るのかしら、と。

その点で霞が関のキャリア人事はやはり特殊な感じがしますよね。

投稿: とみきち | 2012年10月 7日 (日曜日) 03:35

マンション管理組合の理事会での決済策として合議てなことを主張する欲総会勤務の御仁が存在します。単純な多数決的に使用していると思います、又同席の理事達も“賛成”の主旨で挙手していると思いますが、、この場合の合議とは正式に如何に解釈すれば良いと思われますか?背景を説明すれば長句となり、其の説明が無ければ判らんとする助言は回避してください。いきなり定義され、合議は無いと思われますが如何?ε-( ̄ヘ ̄)┌ ダミダコリャ…

投稿: 山本 和敏 | 2018年1月16日 (火曜日) 10:02

山本和敏様

はじめまして。コメントをありがとうございます。
詳しくはわかりませんが、おっしゃるお話から想像しますに、

「合議」ではなく「動議」と発言されているのではないかと思われます。

会議の進行そのものに関する提案で、おっしゃるように違う方向に進めようとする際によく用いられる手段ですね。
議会などではよくあることだと思います。

もし違っていたら申し訳ありませんが、下記のwikiなどで確認くださいませ。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%95%E8%AD%B0

投稿: とみきち | 2018年1月16日 (火曜日) 13:21

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